口にくわえた棒でパソコンを操作する齊藤さん

 茨城県つくば市の住宅街の一角に、障害がある人たちが集う「つくば自立生活センターほにゃら」がある。ハンディの部分さえ補助してもらえれば、やれることはたくさんある。可能性を広げ、自分らしく生きるためにはどうすべきか。自分たちで考え、答えを出し、行動する。

 「ほにゃら」創設メンバーで事務局長を務めるのが、弘前市出身の齊藤新吾さん(39)。自身も筋力が衰える病気のため手足を自由に動かせない。食事、入浴、トイレなど日常生活全般で介護が必要だ。でも齊藤さんには、状況を冷静に判断する頭脳と、考えを的確に伝える言葉と、前に進み続けようとする熱いハートがある。

 茨城県議会で3月、「障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための茨城県づくり条例」が採択された(施行は来年4月)。「ほにゃら」も他の障害者団体とともに議員や関係者に働き掛け奔走してきただけに、喜びもひとしおだが、齊藤さんは「現実の障害者差別をなくすため具体的に行動していかないと“宝の持ち腐れ”になってしまう」と気を引き締める。

 齊藤さんは青森第三養護学校(現青森第一高等養護学校)を卒業して筑波大学に進学。介助ボランティア募集のチラシを自分で配ってスタッフを集めたり、障害のある学生が学びやすい環境(=誰にとっても学びやすい環境)を求めて大学当局に働き掛けるなど道を切り開いてきた。

 景気低迷が続いて人々の間に行き詰まり感が漂うと、他人をやっかんだり攻撃する風潮が広まる。攻撃の矛先は、障害者や高齢者など社会的に弱い立場の人へと向かいがちだ。

 「本当の意味で幸せな国っていうのは、誰もが自分の能力を生かして自己実現を図れる社会なんだと思う。誰かを幸せにしてあげたいと願う気持ちはみんな持っていますよね。その気持ちを育てていくことが大事です」と力まず淡々と語る。

 「ほにゃら」という不思議な名前の由来は、いつも厳しい現実に立ち向かっている人たちのオアシスとなるため、団体名は肩の凝らないものにしたかったのだという。

 5月にスウェーデンを訪問し、障害者を取り巻く状況を視察して意見交換してきた齊藤さん。現地の人たちと青森県人の気質に共通点を見つけたという。「あれだけ福祉面で進んだ国だから、地位向上のため率先して意見を主張する人たちだろうと思っていたら、意外とシャイで言葉少な。やっぱり寒冷な気候が似ているからでしょうかね」