「煮干しラーメンは、僕らのソウルフードですね」と語る田中さん=浅草「つし馬」

 札幌みそ、博多豚骨などに続くご当地ラーメンとして、青森煮干しラーメンの店が都内でも増えている。浅草・雷門近くにある「つし馬」の看板商品「中華そば」=写真=は、澄んだスープに煮干しの匂いをギリッと利かせた“王道の味”。リピーターや外国人観光客で、昼時には行列ができる。

 オーナーは外ケ浜町(旧三厩村)出身の田中剛さん(44)=新宿区在住。青森山田高校時代はラグビー部員。よく青森市内のラーメン店を食べ歩いた。同校卒業後に上京し、居酒屋や中華料理店で修業。ラーメン店のマスターを経て、2000年に豚骨ラーメンの「田中商店」(足立区)を開業し成功させた。2店舗目として「つし馬」を開いたのは03年。

 田中商店では九州出身の客から「マスターは九州のどこ?」とよく聞かれた。青森だと答えると「九州人じゃないのに、なぜ豚骨の魅力が分かるんだ?」と驚かれた。「考えてみれば、自分が小さいころから食べ慣れた味といえば、やっぱり煮干し。2店舗目は“あの味”をそのまま提供しようと決めた」という。店名は、母親(青森市浪岡出身)の旧姓・對馬から取った。

 ラーメン業界の仲間内で、青森煮干しラーメンを評価しない人もいる。「うどんみたい」との声も聞く。でも田中さんは「ある意味、食べ手を選ぶラーメンなんでしょうね。一度食べてやみつきになる人もたくさんいますよ」と揺らがない。

 ひと月に約60店が廃業するというラーメン激戦地・東京で、ギョーザ専門店も含め6店舗(ほかに仙台市に1店舗)を経営している自信が根底にある。

 修業時代、食材の仕込みに手を抜くな-とたたき込まれた。「時間と手間を掛けなければ出合えない味がある。その味を引き出すのがプロの責任。きちっとした料理を出せばお客さんは分かってくれます」

スープに脂は使わず

 「青森の煮干しラーメンはスープに脂を使わない」のが田中さんの鉄則。煮干しが香り立ち、さっぱりした感じのスープにこだわる。「あるラーメン店主がテレビで『煮干しラーメンは物足りない。脂を使えばいくらでも味が良くなる』って言ったんですよ。何も分かってない。そんな小細工したら青森の味じゃなくなる。変えちゃいけないものがあるんです」