鯵ケ沢(あじがさわ)町に入り車を走らせること約10分。肌(はだ)に優(やさ)しい海風が吹(ふ)くスイカ畑。のどかな風景の一角に、高さ約65メートルの風車(所有者・一般社団法人グリーンエネルギー鯵ケ沢)がそびえ立っています。
風力発電は、いい風をとり入れることが重要です。そのためには丁寧(ていねい)な定期(ていき)点検が欠かせません。自動車整備(せいび)などを主に行ってきた青森市の「森山ディーゼル」は、2012年から同町にあった風車1基(き)(出力1500キロワット)の点検(てんけん)、管理(かんり)を請(う)け負(お)っています。発電量は年間370万キロワット時。各家庭のテレビや冷蔵庫(れいぞうこ)のエネルギーとして使われています。
点検は、4人の技術者が交代で行います。入社2年半の松浦功さん(30)もその1人です。点検は毎週行い、さらに月に1度は、タワーの最上階まで登り、ナセル(電力室)を調べます。高所での作業は危険(きけん)と隣(とな)り合わせです。命綱(いのちづな)となる安全帯とヘルメット、滑(すべ)り止めがついた手袋(てぶくろ)は欠かせません。
壁(かべ)に取り付けられたアルミ製(せい)のはしごを松浦さんが登りはじめました。直径3.75メートルの狭(せま)い空間にエレベーターなどありません。松浦さんは「最初は怖(こわ)くて足が震(ふる)えました」と言いますが、軽々10分で登ります。太ると作業に支障(ししょう)が出るので体重管理に気をつけているそうです。
頂上(ちょうじょう)からの眺めは絶景ですが、松浦さんは脇目もふらず任務に集中します。羽根やタワーに亀裂がないか、モーターに油漏(あぶらも)れがないか、羽根の回転は正常か−など約30項目(こうもく)を調べます。松浦さんは「小さな変化も見逃(みのが)しません。トラブルがないことが一番」と表情(ひょうじょう)は真剣(しんけん)。1時間の点検は緊張の連続ですが「風車が元気に回っているのを見ると達成感があります。何げなく使っている電気が自然の恩恵(おんけい)を受けてつくられているということを知ってほしい」と松浦さんは話しています。悠々(ゆうゆう)と回る風車は、松浦さんたちの確(たし)かな技術(ぎじゅつ)に支えられていたのですね。