「最近は『ホタテの人』と言われます」と笑う福嶋さん=東京・蒲田

 「青森にんにくと陸奥湾ほたてのアヒージョ」「大畑産の渓流クレソンのサラダ」…。東京・蒲田に3月にオープンした居酒屋「うおしゅらん(魚酒燗)」のメニューには、青森県や下北にちなんだ料理や食材が随所に並ぶ。むつ市出身の福嶋次郎さん(41)=東京都=が産地と取り次ぎ、食材をプロデュースしている店だ。

 「特に力を入れているのがホタテ」。首都圏で供されるのは北海道産が多いが、「陸奥湾産はもっとおいしい。ホタテ本来のおいしさを知らせたい、というもやもやした気持ちがあった」という。そこで、生きたホタテを産地から直送。北海道産との食べ比べでは「断然、陸奥湾産の勝ちだった」と胸を張る。

 とはいえ福嶋さんは料理人でも食品卸業でもない。本業は広告代理店「インターウェア」の社長だ。都内の外語大卒業後、ITベンチャー企業の経営に10年間携わった。5年前に独立し、デジタルを活用した都心でのプロモーション事業などを手掛けてきた。

 むつ市から「元気むつ市応援隊」応援プロデューサーの一人に任命されたこともあり、古里を応援する取り組みに乗り出した。下北半島と首都圏の人が交流する場が必要だと、2017年、会員制交流サイト・フェイスブックに「陸奥東京」なるグループを発足させた。下北出身や在住者、下北に興味があったりビジネスしてみたい人が対象で、会員は現在、230人に上っている。

 活動の一つが、下北の食材の流通を首都圏で増やす仕組みづくり。なじみの飲食店に働き掛け、扱う店は「うおしゅらん」を含めスペインバルや八百屋など8店舗に増えた。食材はむつ総合卸売市場の業者などに直送してもらっている。

 いずれも郷土色を売りにしたようなご当地居酒屋ではない。「東京には全国から優れた食材が集まるが、陸奥湾ホタテや風間浦アンコウなどそれらと競争して勝てる食材が下北にはある。今まで使っていた食材を下北産や県産に切り替えてもらうだけで、首都圏での流通の幅が大きく広がる」ともくろむ。

 今後は都内に下北関連のコミュニティースペースをつくりたいという。「本業を生かし、下北と東京をリアルタイムで映像でつなぎ、イベントをやったり座談会をやったり。東京の人が下北に求めていることや、その逆を伝え合い、情報やニーズを共有することで、お互いのビジネスにつなげられたら」