鯵ケ沢町役場前で候補の第一声に耳を傾ける有権者=3月29日午前

▼弘前市区(定数六-7)/候補者、支持浸透に躍起
 「全然盛り上がらないな。市民の関心は、むしろ市議選か。あいさつ周りしても『あれ、県議選もあるんだっけ?』って反応だ」

 定数6に現職6人、新人1人が挑む弘前市区。県議選投票日の1週間後に弘前市議選が告示されるため、市民の関心は県議選より市議選だと感じている候補者も多い。また、9人で争い大激戦と言われた前回と比べると立候補者が少ないため、「仕方がないのかな」と漏らす陣営関係者も。

 そんな中、候補者は支持浸透と票の掘り起こしに躍起だ。

 選挙区内で最多の5期目を目指す自民党現職の岡元行人(54)は「『結果にコミット』です。次は5期目になるし、考えるのではなく行動に移す。できることを訴えるだけ。最多当選議員としての使命を果たす」と力を込める。

 しかし、冬に逆戻りしたような天候気温も水を差す。

 3月31日午後、小雪がちらつく弘前市の百貨店前で選挙区最年長の無所属現職の川村悟(71)が買い物客らに訴えた。

 「かつてない、経験したことのない少数激戦の戦い。1万1千票取らないと当選できないという非常にハードルの高い選挙戦となっている。何とかこの困難を乗り越え当選を勝ち取りたい」。こう意気込んだが、冷たい風が吹く中では、足を止める買い物客はほとんどいなかった。

 選挙戦初日の市役所前での演説には市長の桜田宏や大勢の市議が応援に駆け付けるなど、支持基盤は固いとみられる自民党現職の谷川政人(49)も「感触は天気みたいな(ぱっとしない)もんだ」と一層の引き締めを図る。無所属現職の菊池勲(37)は「(菊池は)大丈夫だと思われることが怖い」とし、「政治家としての一丁目一番地は街頭演説。どんな天気でも続ける」とマイクを握る。

 自民党現職の齊藤爾(48)は、街頭演説はせず選挙区内をくまなく選挙カーで回り、他候補とは一線を画す選挙戦を展開。「投票率は前回以上にはならないのかな。(自身は)2回連続最下位当選。ほかの人のことを気にしている余裕はない」と地道な活動に徹している。

 共産党現職の安藤晴美(67)と、新人で県議選唯一の立憲民主党公認の鶴賀谷貴(56)は、参院選まで続く選挙イヤーを意識し、政党色を出した活動を展開する。安藤は消費税増税反対など国政と連動した訴えを続け、共産党市議も応援演説に立つ。

 出馬表明が最後発となった鶴賀谷は、選挙カーを降り、自ら道行く人たちにチラシを配布。党本部から大物弁士を応援に招くなど、アピールに必死だ。

▼西郡区(定数一-2)/16年ぶり攻防に緊張感

 西海岸を南北に走る国道101号。鯵ケ沢、深浦両町を行き交う選挙カーから響く訴えが、日本海から吹きつける寒風を突き、16年ぶりに交錯している。

 「郷土発展のため初心に帰り頑張ります」。5期目を目指す自民党現職の工藤兼光(75)は過去3回が無投票当選。無所属新人・齋藤孝夫(65)の挑戦を受けて久しぶりに臨む選挙戦だけに、握るマイクにも自然と力が入る。「初めてやるような気分」とかつてない緊張感が漂う。

 出馬表明していた鯵ケ沢町議会議長の長谷川統一(のりかず)が1月に急逝。「遺志を継ぎたい」と2月に入ってから対抗馬に名乗りを上げたのが、先輩町議で議長経験もある齋藤だった。

 4期16年の実績と国・県とのパイプを自負する工藤は「継続は力。県も地域も厳しい時にこそ政治力を発揮しなければいけない」と強調しながら、序盤から選挙区内を小まめに周回する。短期決戦に挑む齋藤は「高規格道路の整備が進んでいない。今何かをやらなければ地域はもっと悪くなる」と危機感を訴え、「相手の背中が見えてきた」と草の根活動で追い上げる。

 告示日の3月29日。鯵ケ沢町役場前で一足先に第一声を響かせた工藤には衆院議員の木村次郎が駆け付け、「平成の先の時代にあっても地域の声を届けるリーダーに」と援護射撃した。工藤は続いて訪れた深浦町でも町長の吉田満と県議選後に自らの選挙を控えた町議らに囲まれ、支持基盤の厚さを見せつけた。

 ただ、両候補の地元・鯵ケ沢では様相が違った。一昨年12月の町長選で工藤が支援した現職を大差で破り初当選した現町長・平田衛が、齋藤のためにだけ役場前でマイクを握り、両首長のスタンスの違いが浮き彫りになった。第一声で工藤の脇に立った地元町議が2人だったのに対し、齋藤には町政与党会派の6人が並んだ。

 「『相手が強いからと、土俵に上がる前からびびるな』。そう指導してきた自分が今、同じ立場に置かれている」。鯵ケ沢相撲錬成館丹代道場の館長として子どもたちを指導する齋藤は、自らを鼓舞する。工藤は「対立候補が現れたのは歓迎すべきこと。ただ、一人前になるには何事も10年はかかる」。経験の差を強調し、正面から迎え撃つ。