演説に聞き入る支持者たち=29日午後、平内町役場前

▼東郡区(定数一-2)/勝敗 県政界に影響も
 県議選が告示された29日午後、東郡区の大票田・平内町の役場前。無所属新人福士直治(48)の応援演説に立った地元町長、船橋茂久は「その勇気と決断に心から賛辞を送りたい」と、9選を目指す自民党現職神山久志(71)=公明推薦=に挑む陣営を鼓舞。さらに神山をゾウに例え「ゾウがわれわれアリを踏みつぶそうとしている」と声を張り上げた。

 その30分前、同じ場所で行われた神山の街頭演説には、知事三村申吾が駆け付けた。外ケ浜町での街頭には自民党県連会長の江渡聡徳、今別町では同会長代行の津島淳が応援に立ち、党県連幹事長を務める重鎮神山を多方面から支援する態勢を見せた。

 東郡区で選挙戦になるのは16年ぶり。2017年の外ケ浜町長選で、神山が新人の山崎結子を擁立し現職森内勇を破ったことで、保守の地盤に亀裂が入った。定数1の同区に、当時自民党員で今別町議会副議長だった福士が出馬表明(後に党除名)。船橋らが福士支援に回るなど、神山と東郡の首長や有力者との関係が従来とは違ってきていることが浮かび上がる。

 神山陣営には、自民県連幹部をはじめ、山崎、今別町長の中嶋久彰、元蓬田村長の古川正隆らが名を連ねる。一方の福士陣営には、船橋、蓬田村長の久慈修一、元今別町長の阿部義治と熊谷範一、森内、元蟹田町長の笹木義廣らがついた。

 継続か、交代か-。東郡はいまや天下分け目の戦いに突入している。

 神山が強調するのは、県や国とのパイプの太さ。多選批判に対しては「長年やってきたからこそ、できることがある。政治家として今が旬だ」と切り返す。中嶋は「自民党を除名になった人に、頼ることができるのか」と福士陣営を牽制(けんせい)する。

 福士は「東郡は無投票が続き、選択肢がなかった。若い世代の声を届けたい。若さと行動力で地域を良くしていきたい」と訴える。

 一方の陣営が街頭演説しているところを相手陣営の関係者が遠目に偵察したり、車の中から演説の様子を撮影して走り去る場面もあった。水面下での票の奪い合い、切り崩しも激化の様相をたどっている。

 県政界のある関係者は19語る。「もし仮に神山に万が一のことがあると、地域はもとより県政界、自民県連内のパワーバランスが変わる。東郡の勝敗は、一地域の出来事にとどまらない」

▼青森市区(定数一〇-12)/読めぬ票 鍵握る浪岡

 「浪岡の皆さん、よろしくお願いします」-。告示日の29日夕、青森市浪岡のスーパー前で、2時間で4人が相次いで街頭演説した。

 固い支持基盤を持つ公明党現職の伊吹信一(58)が子育て支援の充実など県政での政策を主張した一方、無所属元職の渋谷哲一(57)、自民党現職の高橋修一(48)、無所属新人の小倉尚裕(61)の3人は浪岡地区の課題を中心に支持を訴えた。この3人は相互に支持層が重なり、複数の陣営関係者は「浪岡票が勝負や順位の鍵を握る」と語る。

 野党系の渋谷は同地区が地元で今任期で引退する同じく野党系の古村一雄の支援を受ける。4回連続トップ当選を狙う高橋は、浪岡地区に後援会を持ち、これまで同地区で票を伸ばしてきたとされる。同地区が地元で、衆院議員だった故・木村太郎に近かった小倉は保守の立場から「浪岡を固めたい」と意気込む。

 定数10に12人が立候補する青森市区では、当落ライン予想の中で、多くの陣営が「渋谷、小倉、鹿内の票が読めない」と渋谷、小倉に加え、無所属元職の鹿内博(71)の名前を挙げ、警戒感を強める。

 こまめに街頭演説を行い、無党派層と反原発票の取り込みを図る鹿内。ただ、渋谷とは青森市長選出馬の際、相互に応援してきた経緯があり、両者が共に出馬したことで、得票に影響を及ぼす可能性が指摘されている。

 自民党現職で「選挙の行方が読めない」と危機感を抱くのは森内之保留(54)。票の掘り起こしへ後援会の引き締めを図っている。前回15年の選挙で10票差で当選に滑り込んだ山谷清文(61)は各地区に選挙カーを走らせながら、支持者回りにも注力。花田栄介(37)は地盤の東部地区を中心に、雇用や子育て環境の充実を訴えている。

 無所属現職の関良(61)は地元・西部地区や福祉関係者の地盤固めに傾注。同じく無所属現職で電力労組が支援組織の一戸富美雄(62)は街頭で市のまちづくりなど、身近な問題を取り上げ、無党派層に訴えている。

 県議を6期務めた諏訪益一の後継者である共産党新人の吉俣洋(45)は諏訪や妻の青森市議と共に街頭に立ち、浸透を図っている。8年ぶりの議席奪還によって党の存在感を高めたい社民党新人の齋藤憲雄(67)は労働組合などの組織票を固めている。

 4月7日に投開票される県議選。当選を目指し各陣営がしのぎを削る選挙区の戦いを追った。