「101回目の桜」を引っさげて、初の全国ツアーに飛び出すりんご娘の(右から)彩香さん、王林さん、ときさん、ジョナゴールドさん。桜が満開となる季節に、また全国の人たちを連れて地元に戻ってくる=2018年4月、弘前公園本丸(提供・リンゴミュージック)

 「人は、生まれたときのことも、死ぬときのことも記憶できない。まして、17年しか生きていない自分が、経験もしていないことをどうやって歌えばいいのか」。ジョナゴールドさん(17)は、2018年春に発表された「101回目の桜」の歌詞を初めて渡されたときの戸惑いを振り返る。

 何度だって咲く桜の花は 清く誇り高く優しく強く たとえ大きな手が僕らを 握り潰(つぶ)そうと
 愛で繋(つな)いだ理想なら死なない
(「101回目の桜」より)

 リンゴの木の剪定(せんてい)技術を応用した、「弘前方式」と呼ばれる独自の管理技術により、樹齢100年以上の老木が見事に桜の花を咲かせる弘前公園。この桜に人の死生観を重ねた同曲は、もはやアイドルソングを超越した普遍的な輝きを放つ。

 4人は悩んだ。だが、歌ううちに、曲は等身大の彼女たちにもじんわりとしみ込んでいった。「望んだわけでもない場所で毎年きちんと咲く桜のことを考えたら、自分の悩みなんかちっぽけなもの。初めて曲の世界観を理解した気がした」とジョナゴールドさん。

 ただ生まれ変わり何度でも咲き誇る
 桜のように生きたい(同)

 彩香さん(17)は「今でも歌うたび、毎回泣きそうになる」と、歌に込める並々ならぬ思いを語る。

 この曲が仕上がっていく前後、グループにちょっとした“事件”もあった。リーダーの王林さん(20)が2017年8月、有名プロデューサー秋元康さんが手掛けるテレビ朝日系列のオーディション番組「ラストアイドル」から声をかけられ出演。落選したものの、落選組で組んだグループ「Good Tears」のメンバーとなった。だが、ちょうど「101回目の桜」を歌い始めたころに「りんご娘に専念したい」と決断。18年6月に脱退した。

 資金力や人脈にものをいわせた東京のメジャーの芸能活動は、規模もスピード感もまったく違った。「りんご娘のために」と思い、王林さんは多くを学ぼうとした。だが、りんご娘で立つよりもずっと大きなステージの上でいつも抱いていたのは、やるせない悔しさでしかなかった。「なぜこの光景を、りんご娘の4人で見られないんだろう」-。東京に、全国にあまたあるアイドルグループとはまったく置き換えることのできない、唯一無二の存在を改めて思い知った。

 王林さん以外の3人は「Good Tears」を応援していたという。ただ、ときさん(20)は「改めて私たちだけで頑張りたいという王林の本気の思いに、私も応えなければいけないと思った」。王林さんは「あくまでもご当地アイドルとしてみんなで大きくなりたいんです」と、取材に今の思いをはっきりと語った。「地元で歌う」「地元を歌う」という原点に復帰したリーダーを中心に、弘前の魅力の伝道師たちはさらに絆を深めた。

 王林さんはかつて東京で見た高みへの道を、再び3人とともに地元から目指す。その第一歩として4人は3月から未知の全国ツアーへ飛び出す。20年の感謝の思いと、いつまでも死なない奇跡の桜をまごうことなく表現した「101回目の桜」のこんな歌詞を胸に。

 さあ手をつなごう
 その温もりを大切な誰かに伝えるために
 みんな命という一瞬を生きる光
 出会ってくれた君にありがとう

=終わり=