多田さん作詞作曲の「RINGOSTAR」発表直後、満開の桜をバックに同曲を披露するりんご娘。グループが4人になって初のシングルは大きな転機の一曲となった=2017年5月3日、弘前公園市民広場

 りんご娘の地方からの発信は、その活動に共鳴する人たちを中央からも呼び込んでいる。

 101回目の桜PV(http://u0u1.net/PmSU

 「数年前の自分なら、まったく考えられなかったことを今、している」というのは、りんご娘のプロデュースにかかわっている下田翼さん(33)。東京出身で、都内の広告代理店に勤めていたが、2015年、地域おこし協力隊員として弘前へ。1年務め、16年にフリーの企画・制作者として独立。それまで観光ですら来たことがなかった弘前に根を下ろし、過去のノウハウを生かしてアドバイス役を買っている。

 「売れるため、目立つため、というより、彼女たちが暮らしているこの街を応援したい、そういうマインドになってもらうためにはどうすればいいのかという視点で考えている」。20年にわたるリンゴミュージックのぶれない目線に、自身も寄り添う。

 りんご娘は、コンセプトがシンプルなだけに、その「見せ方」には多様性を持たせながら、細部にまで徹底的にこだわる。例えば「RINGOSTAR」のミュージックビデオには、弘前城の追手門や、青森銀行記念館など、弘前の街の風景が満載されているが、すべて車の後部座席からの、印象的な目線になっている。「子どものころ、親が運転する車の窓から見た弘前を懐かしんでほしい、という思いから発想した。地元の人が喜んでくれるものでないと、県外にも伝わらない」と下田さんは説明する。

 りんご娘が優勝した16年の「国民的アニメソングカバーコンテスト 愛踊祭~あいどるまつり~2016」で審査員を務めた縁で楽曲提供を続けているミュージシャンの多田慎也さん(42)も、仕事の軸足を東京から弘前へと大きく移しつつある。優勝後の17年春に発表した「RINGOSTAR」が彼女たちの大きな転機となり、一連の楽曲は、全国にインパクトを与えるだけの大きな流れを生み出した。同曲はこれまで、動画投稿サイト「ユーチューブ」で約20万回再生されている。

 20代の下積み時代、個別指導の塾の講師を何年も務めた。「この曲はどんな印象?」「ここはどういう気持ちで歌いたい?」などと、彼女たちの思いを引き出すソフトな語り口は、まさに先生のよう。目まぐるしい芸能の世界ではあまり見られない、独特の優しい雰囲気をまとう。

 自動車産業が盛んなアメリカの一地方の街デトロイトの別称「モータータウン」がそのままレコードレーベルの名称「モータウン」になり、その独特なソウルミュージックが音楽の一ジャンルにまでなったように、弘前で弘前レーベルの独自の音楽をつくっていきたいという。そして「その第1号アーティストがりんご娘になれば」と期待を寄せる。

 「彼女たちは『ラブ(恋愛)』だけでなく『ライフ(人生)』も歌える。そしてライフがよりよく似合う。浮ついたところのない感じが、普通のアイドルよりも曲に説得力を持たせている」と分析する。

 その1曲が、多田さんと、リンゴミュージック代表の樋川新一さん(48)が共作し、今回初の全国ツアーのタイトルにもなっている「101回目の桜」。弘前市公園緑地課の桜守小林勝さん(65)が、コンセプトづくりのため2人が行ったインタビューに協力している。100年以上も花を咲かせる桜と、限りある人の一生を対比させて、桜のように強く生きたいという「死生観」をテーマにした楽曲をうたいこなすのは、若い彼女たちにとって初めは難題だった。