初めてのステージで手をつないで歌う、10歳のころの王林さん(右)とときさん。規律第一に、10年以上のキャリアを積んでいまがある=2008年8月(提供・リンゴミュージック)
りんご娘を指導する在りし日の藤本さん=2004年5月(提供・リンゴミュージック)

 「実は、随分ググ(ウェブで検索)らせてもらいましたよ」。売れっ子の脚本家で宮城県出身の宮藤官九郎さん(48)が、りんご娘のプロダクション・リンゴミュージック社長の樋川新一さん(48)にこう打ち明けたという。宮藤さんが、ご当地アイドルの涙と根性の成長物語を描いた2013年のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の脚本を手掛けた際、りんご娘はその下敷きともなっていた。

 メンバーたちの下積みのキャリアは、宮藤さんにそう思わせるに足るだけのものがある。13日に成人式を迎えたリーダーの王林さんは、リンゴミュージックでの経歴が最も長く、2007年8月、小学3年の時にオーディションに合格。2010年にりんご娘の姉妹ユニット「アルプスおとめ」の「斎藤」としてリーダーに昇格。13年にりんご娘の「王林」となった。そこからでもすでに7年の蓄積がある。

 華やかな表舞台をよそに、リンゴミュージックは日常生活が第一。「人として二面性があるようでは本物にはなれない」というのが新一さんの信条だ。あいさつをはじめ、規律の順守は徹底している。

 お寺での合宿で座禅を組み、マラソンをし、箸の持ち方から指導される。王林さんは「最初は未知の世界で、すべてにおびえる日々だった」、逆に自我が確立されていた中学1年で飛び込んだジョナゴールドさんは「何でこんなことをしなきゃいけないのか、という葛藤もあった。でも今は大事なことだと分かる」。

 新一さんの妻でマネジャーの由佳子さん(45)は、「子どもたちを指導していると、そのときは『はい』と言ってはくれるが、本当に気付くのはここを離れてからということも多いよう。でも、私はそれでもいい」と話す。

 決してステージに立つための即効性だけを求めるのではない。一人一人の本当の人格の陶冶(とうや)を図る活動は、りんご娘の4人をはじめ、在籍する小学校3年生から大学2年生までの15人の在籍生たちにとって、もうひとつの学校だ。

 背景には、新一さんの弘大付属小学校時代の恩師で、藤崎町の教育長も務め、2013年に77歳で亡くなった音楽教師藤本盛三さんの存在がある。

 新一さんは藤本さんの指導の下、同小吹奏楽部でトロンボーンを担当し活躍。6年生の時に全国優勝を果たしている。「しつけが厳しく、音楽以前に礼儀だった。どうすれば全国一という目標を達成できるかを理解した気がした」。音楽の原体験の体感を信じて、親代わりのように子どもたちに相対する。

 藤本さんは生前、たびたびリンゴミュージックを訪れて講話をするなど、教え子の活動を理解し、協力を惜しまなかった。そして、りんご娘の活躍を誰より喜んだ。

 由佳子さんは今でも、藤本さんが残した自筆のレジュメ「歌手・演奏者になるために」を大切に保存している。「今でもこれが基本です」と由佳子さん。きちんとした生活習慣を身に付けることなど、「心技体」の重要性を説くその遺訓に、藤本さんは聖書の一節を記している。

 「狭い門からはいれ。滅びにいたる門は大きく、その道は広い」