「愛踊祭2016」のステージではじけるりんご娘の(左から)ジョナゴールドさん、ときさん、王林さん、彩香さん。見事242組の頂点に輝いた=2016年9月10日、東京ドームシティーホール(提供・テレビ朝日ミュージック)
「愛踊祭2016」のステージではじけるりんご娘の(左から)彩香さん、ときさん、王林さん、ジョナゴールドさん。見事242組の頂点に輝いた=2016年9月10日、東京ドームシティーホール(提供・テレビ朝日ミュージック)
飛躍の年の幕開けを地元弘前で飾った4人。2ステージに、県外、海外からも含め約700人のファンが詰め掛けた=2日、弘前市駅前のヒロロ

 「参加総数242組。長きにわたって戦ってきたアイドルたちの頂点は一体誰なのか」。司会者の前振りに、会場がかたずをのむ。暗転したステージ。気持ちをせかすようなBGMがふっと途切れ-。

 「りんご娘!」

 2016年9月10日、日本一のご当地アイドルを決める「国民的アニメソングカバーコンテスト 愛踊祭~あいどるまつり~2016」。スポットライトの中の4人が引き寄せた奇跡の瞬間だった。顔を覆い、涙で抱き合う王林さん(20)、ときさん(20)、ジョナゴールドさん(17)、彩香さん(17)。その光景に、常にはらんでいた解散の危機を重ねる人など、誰もいなかった。

 「音楽の力で弘前を、そして地域を元気にしよう」。弘前市内で自動車修理・販売店を経営する樋川新一さん(48)がボランティア団体「弘前アクターズスクールプロジェクト」を立ち上げ、りんご娘の取り組みがスタートしたのは00年。当時人気絶頂を誇っていたアイドルグループ「モーニング娘。」のメガヒット「LOVEマシーン」をほうふつさせる楽曲に津軽弁の歌詞をちりばめ、同年リリースしたデビューシングル「LOVE&SOLDIER」で「半年で紅白に出せると思っていた」(樋川さん)。無鉄砲なぐらいの若さと情熱があふれていた。だが芸能界の現実は厳しかった。

 組織を発展的に解消し05年に有限会社「リンゴミュージック」を設立。同年制作した8枚目のシングルで、農業青年との恋を歌った「彼の軽トラに乗って」のリリースを報じる新聞記事には「初のCD全国発売」の見出しが躍った。当時のメンバーの初代ジョナゴールドさん(26)、レットゴールドさん(28)はおよそ9年間にわたり活動。地元では高い認知度を誇るようになり、全国ネットのテレビ番組などにも出演した。

 2010年代、ご当地アイドルの成長を描いた13年のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」に象徴される「アイドル戦国時代」に突入。りんご娘はあと一歩のところで次のステップへの殻が破れない停滞が長く続いた。資金的にも限界が見えていた。「誰のためにもならない。もうやめよう」。笑顔で活躍するメンバーたちをよそに、樋川さんは常に、撤退への思いを胸のうちに秘める日々を過ごす。15年9月には、第1回愛踊祭に現メンバーの王林さん、ときさんが東北代表として出場するが涙をのんだ。

 そして翌16年。起死回生への望みを懸け、2代目ジョナゴールドさんと彩香さんを新たにメンバーに加えて臨んだ2回目の愛踊祭。それまで地道に蓄えてきた実力と、新たな血を注ぎ込んだことによりわずか1年間で大幅に活性化したチームの姿が、審査員に高く評価されたばかりでなく、観客の投票で選ばれる「ベストオーディエンス賞」の獲得にもつながった。

 2日、弘前のヒロロで行われた今年最初の活動の新春ライブ。王林さんのテレビ全国ネット出演など、18年の大活躍を祝福するファンが、2ステージに、県外や台湾からも含め計約700人詰め掛け、4人ははじける笑顔で応えた。王林さんは桜の季節に控える初の全国ツアーに触れ「私たちも桜前線と一緒に北上し、全国の皆さんをここに連れてきます」。堂々の宣言に、桜を愛する弘前市民らから大きな拍手がわき起こった。

 05年、「彼の軽トラ-」の新聞記事に、樋川さんはこんな言葉を残している。「私たちの目標は、愛すべき地元にいながら、アーチストを目指す人たちを支援する仕組みをつくること。音楽を通して、青森県を日本中、そして世界に情報発信する基礎を築き上げたい」。その信念は、今もいささかも変わらない。

 弘前市の「農業活性化アイドル」りんご娘の活動が20年目に突入する。その軌跡をたどり、メンバー4人と、支える人たちの素顔に迫る。

 ※年齢はすべて現在の年齢です。