吉幾三さんのヒット曲に乗せてスコップ三味線を披露する浪岡さん=11月4日、横浜市

 歌謡ショーのステージで、スポットライトが照らすスコップと栓抜き。11月4日、横浜市内の飲食店で浪岡梵珠山(ぼんじゅさん)(本名・葛西正幸)さん(59)=埼玉県春日部市=がスコップ三味線を披露すると、酒席で歓談していた観衆の耳目が一斉にステージへと集まった。

 五所川原市出身で、就職を機に上京。今は幼稚園で働く傍ら、週末になるとライブ活動のため、「楽器」を手に電車に乗って各地の飲食店や高齢者施設などに赴く。

 同郷の吉幾三さんのヒット曲といった定番に加え、レパートリーにはフォークソングやクラシックの楽曲もある。花柄のきらびやかな衣装をまとい、演奏の合間に繰り出すトークも軽快だ。

 スコップ三味線との出合いは2008年夏。勤務先の職員旅行で古里を案内した際、地元の後輩で「津軽すこっぷ三味線」家元の舘岡屏風山さんから演奏の仕方を教わった。今では五所川原市で恒例となった「世界大会」も、当時はまだ始まったばかり。参加者が少ない-と聞いた浪岡さんは「後輩を助けるつもり」で同年12月の大会に出場することを決めた。

 家元と同じような、土や雪をすくう金属部分が大きめのスコップを金物店で発注。「じょんがら女節」の音源を用意して自宅で練習を積み、臨んだ大会ではいきなり優勝をもぎ取った。

 大会を機に本格的な活動を開始。首都圏や東北を中心にライブを重ね、15年には現在の名前を家元からもらった。機会があれば、テレビやラジオにも出演している。

 スコップ三味線の音色を「実は奥が深い」と語る。たたき方は少なくとも25種類あり、金属部分にある溝の幅によっても音色が異なるという。ライブ用として持っている4本のスコップは「メーカーや大きさによって音の出方が違う」と浪岡さん。音色の追求に意を注いでいる。

 現在は自宅の庭に建てた小屋が練習場。来春で仕事が定年を迎えるため、ライブなど活動の幅を広げたいと考えている。津軽三味線との協演が目標の一つという。

 教室を開講し「師範」として指導にも当たる。これまでに10人ほどの弟子を持ち、既に世界大会の優勝者を輩出した。首都圏を拠点としながらも、古里発祥の芸を普及させようと奔走する。

 「スコップ三味線は老若男女ができる。若い人は恥ずかしがるけど、一緒にハーモニーを奏でられたらいいなあ」