むしむし、じりじり、日差しが、真上から照りつけた。県内はきのう、梅雨の中休み。湿度が高く暑苦しかった。梅雨は「黴雨(ばいう)」とも言い、黴(かび)は夏の季語だ。活発に増える条件がそろい油断ならない。

 とはいえ、有用なカビがある。薬のペニシリンは青カビから生まれた。麹(こうじ)菌は味噌(みそ)、醤油(しょうゆ)、みりん、米酢など発酵食品に欠かせず、無形文化遺産の和食を支える。しかし、毒を出すなど迷惑なカビは数知れない。

 大学進学で上京した頃、瓶詰めのノリの佃煮(つくだに)にカビが生え、捨てたのも梅雨時だった。冷蔵庫に入れたから大丈夫と過信したのだが、冷やしたのに生えたのが驚きだった。カビは菌糸を伸ばして成長し、盛んに胞子を作る。胞子はまき散らされ、空気中を漂い、人知れず暮らしに入り込む。<徐(おもむ)ろに黴がはびこるけはひあり 松本たかし>。

 カビの発育条件は適度な温度、湿度、栄養、酸素だ。ホコリや食べかす、人の垢(あか)などの汚れが餌となる。自宅の風呂場の黒カビに悩まされ、天井や壁、換気扇の隅々まで、重曹を使って退治したことがある。それ以来、拭き掃除が習慣になった。

 手元の歳時記からもう一句。<黴の世や言葉もつとも黴びやすく 片山由美子>。作句にあたって、カビが生えたような古くさい言葉は使わない、との戒めであろうか。参院選はあす公示。さて昨今の政治の言葉はどうであろう。