ロシアによるウクライナ軍事侵攻は、国際社会の結束力を試すとともに、日本外交の課題も如実に浮かび上がらせた。

 国際秩序を破壊するプーチン大統領の蛮行に対し、日本は前例のない厳しい制裁措置を決め、先進7カ国(G7)など欧米と足並みをそろえたのは当然だ。ただ、国連人権理事会からロシアを追放する決議案の採決や、ロシアへの経済制裁を巡っては、インドや東南アジア諸国と温度差が鮮明になった。

 「法の支配」や「民主主義」、「人権」といった価値観は理解しながらも、日本や欧米と同一歩調を取れないそれぞれの立場の違いをどう埋めていくのか、G7唯一のアジアの国である日本に課せられた役割は大きい。

 こうした中、岸田文雄首相が3月のインド、カンボジアに続き、大型連休にはインドネシア、ベトナム、タイを、林芳正外相も中央アジアを訪問したのは、理にかなった外交と言える。いずれも国連人権理事会追放決議に反対、ないしは棄権した国であるからだ。

 カンボジアは東南アジア諸国連合ASEAN)、インドネシアは主要20カ国・地域(G20)会議、タイはアジア太平洋経済協力会議(APEC)の今年の議長国で、参加国に「ロシア包囲網」を働きかけてほしいとの思惑が込められていた。

 しかし、現実は甘くない。岸田首相は今回のアジア3カ国歴訪で「主権や領土の一体性が尊重されなければならないという共通認識を確認できた」と成果をアピールする。海洋進出を強める中国をけん制する狙いもあったにせよ、目の前のウクライナ危機で、ロシアを名指しした非難や制裁に踏み込むことはできなかった。3月の外遊と同様に、アジアの実情を思い知らされた格好だ。

 日本外交の大きな柱となった「自由で開かれたインド太平洋」では、日本、米国、オーストラリアと戦略対話の枠組み「クアッド」を構成する肝心のインドが、ロシア制裁などに加わらない状況が続く。

 東南アジアの“及び腰”は、ロシア対応でG7と明確に一線を画し、経済力を背景にこの地域で台頭する中国の存在とは無関係ではない。各国とも、これ以上の分断がもたらされることを懸念しているのだろう。

 日本は、ロシアに影響力を持つ中国、民主主義という共通の価値観を持つ韓国と首脳同士の対話が途絶えたままだ。ウクライナ危機に際して、隣国と意見交換すらできないのは正常とは言えまい。そんな空白を突いているのが度重なる北朝鮮のミサイル発射ではないか。成否は別にしても、中国と激しく対立しながら、首脳を含め話し合いの窓口を維持している米国とは対照的だ。

 日本外交に求められるのは、足元を固めることだろう。韓国とは政権交代を機に、原則を譲らないまでも、知恵を絞り最悪の関係から脱却する。中国とも、国際社会共通の課題について協議できる環境を構築する。そうした近隣外交によって、アジア各国に“安心感”を与えなければならない。

 その上で、アジアに対し、地道に粘り強く価値観を説きつつ、各国の事情を考慮して多面的なアプローチを展開していく。温度差を埋める重層的な戦略が必要だ。