第4回東奥文学賞


◇大賞(賞金100万円)
 「健やかな一日」  田辺典忠(青森市)

 第4回東奥文学賞は、大賞に田辺(たべ)典忠さん(青森市)の「健やかな一日」が決まりました。

 第4回となる今回は、県内外から65作品の応募があり、1次選考で5作品を選定。ともに弘前市出身の長部日出雄氏(直木賞作家)、三浦雅士氏(文芸評論家)が最終選考を行いました。

 東奥文学賞は2008年の東奥日報創刊120周年を記念して創設。県内在住者および本県出身者を対象に新人作家を発掘・育成するのが目的で、ジャンルを問わず、小説(400字詰め原稿用紙100枚以内)を募集しました。

 贈呈式は2月10日に青森市の東奥日報社で行う予定です。

田辺典忠さん 受賞の言葉/少年の夢 70歳で結実

 この度は、拙作「健やかな一日」が名誉ある賞をいただくことになり感無量のものがあります。小説を書くのはこれで終わろうと心に決めて取りかかった渾身(こんしん)の一作です。ただ応募はしましたが、大賞まで手が届くという自信はありませんでした。中央の受賞作品などは、若い感性が凌駕(りょうが)しているからです。この歳(とし)ですがと恐縮しながらの投稿でした。

 15歳の時に文学に憧れた少年の夢が、人生の終盤になった70歳で結実した、そんな思いです。

 「健やかな一日」では老人ホームで暮らす入居者たちの交流とそれぞれの事情を描きました。この構想は、演劇の舞台づくりから手に入れたものです。

 私は県立高校教諭を定年した後、青森市にある劇団支木に所属し、1年に1本の割合で、作・演出をしています。昨年で10作品になりました。そのうちの3作品が老人ホームを舞台にしています。これらの舞台を創ったことが、今回の小説に繋(つなが)りました。

 最初に老人ホームを舞台にしたのはラジオドラマでした。FM青森のアナウンサーであった平山早苗さんが概要を組み立て、私に台本を書かせてくれました。ドラマは「祝いの響き」というタイトルで電波に乗りました。老人ホームに目を向けるきっかけとなる作品になりました。その平山さんは昨年末に亡くなりました。残念でなりません。

 古希を迎えて創作活動から退陣する時期を探し始めていましたが、考え直すことにします。本賞は、前途有為な新人作家を発掘・育成するためとありますので、私は新人として出発点に立ったのです。中央文化とか地方文化とかに関心はありません。創作する時は、必死の思いしかありません。定年して10年はあっと言う間でした。次にやってくる10年間もあっと言う間に違いありません。その間必死でやってみようと考えるようになりました。

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 <たべ・のりただ 1946年7月14日、青森市生まれ。青森高校を経て明治学院大学文学部英文科卒。現在は青森山田高校非常勤講師、劇団「支木」座付き作家。過去に第20回青森県文芸新人賞を受賞。本名・田邊典忠>

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