東奥日報 東奥賞


第2回東奥文学賞


◇大賞(賞金100万円)
 「早春の翼」  田邊奈津子(弘前市)

◇次点
 「雨やどり」  高森美由紀(三戸町)


 第2回東奥文学賞は、大賞に田邊奈津子さん(弘前市)の「早春の翼」、特別賞の次点に高森美由紀さん(三戸町)の「雨やどり」が決まりました。

 第2回となる今回は、海外も含めて県内外から85編の応募があり、1次選考で5作品を選定し、ともに弘前市出身で直木賞作家の長部日出雄さん、文芸評論家の三浦雅士さんが最終選考を行いました。

 東奥文学賞は、2008年の東奥日報創刊120周年を記念し創設。新人作家の発掘・育成を目的に、県内在住者および出身者を対象に、ジャンルを問わず、小説(400字詰め原稿用紙100枚以内)を募集しました。

 贈呈式は2月6日、青森市の東奥日報社7階ホールで行います。



田邊奈津子さん受賞の言葉/書き続ける大きな励みに

 歴史ある東奥日報社が創設した東奥文学賞、その第二回目をまさか私が射止めるなんて。信じられない気持ちで一杯です。自信は全くありませんでした。前回の次点を頂いた後でスランプに陥り、悩み苦しんでやっと書き上げましたから。

 筆を執っている間は、自宅から岩木山を眺めるだけでなく、ある時はひとり原付きバイクで、またある時は夫の運転する車で山麓を巡りました。山桜の並木道、緑濃い夏山、巌鬼山神社に身をおき、どう書こうか思案したのです。

 そんな日々のなか、こうも感じました。檀家(だんか)の寺を持つも無宗教にひとしい私にとって、文学こそが救いであり、精神の拠(よ)り所ではなかったかと。辛(つら)いとき寂しいとき一冊の本にどんなに慰められたことでしょう。我が子に自作の童話を読み聞かせたことはかけがえのない思い出ですし、本はいつでも胸ふるえる感動を与えてくれる、師であり友でした。

 生粋のというか土着の青森県人である私が、本当の意味で郷土に誇りが持てるようになったのは、歴史や民俗を学んでから。もともと女性史に興味があったのですが、先人の苦渋に満ちた道のりがそのまま自分のルーツなのだと気づくと、世界観が変わりました。さらに、かつてのおんなたちが紡いだ麻布や津軽こぎん、南部菱刺の奥深さを知ってからは、たとえ荒れ野をたった独りで歩いているかのごとき状況でも、何かしら見守ってくれるまなざしがあることを感じるようになりました。決してお前は孤独ではないのだというささやきにも似た、心強い何かを。

 継続は力なりと、地元の先生や先輩方から教えて頂きましたけれど、あきらめないで本当に良かった。拙作を拾って下さった長部先生と三浦先生、関係者の皆様に深く感謝しております。力ない私を温かく導いて下さった方々のご厚情、この身に沁(し)み入るばかり。

 受賞は書き続けるうえでの大きな励みであり、読んで下さる皆様が心の支えです。誠にありがとうございました。

 ◇

 <たなべ・なつこ 1963年、黒石市生まれ。弘前市在住。弘前中央高卒。主婦。弘前文学学校で5年間学び、歴史民俗を田中忠三郎氏に師事。著書に「つがる時空間」(一心社)、「はばたけ、リンゴ園のハンター」(共著、岩崎書店)など。グラフ青森「青森の暮らし」に「城下町通信」を連載中。「瑠璃」同人。弘前ペンクラブ会員>




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