東奥日報 東奥賞


第1回東奥文学賞


◇大賞(賞金100万円)
 「ロングドライブ」  世良啓(藤崎町)

◇次点
 「碧(あお)の追想」  柳田創(弘前市)
 「恋唄」  田邊奈津子(弘前市)


 東奥日報社が2008年12月6日、創刊120周年を記念して創設した「東奥文学賞」の第1回入賞作が決まった。大賞(賞金100万円)は世良啓さん(藤崎町)の「ロングドライブ」、特例として設けた「次点」には、柳田創さん(弘前市)の「碧の追想」と田邊奈津子さん(同)の「恋唄」が選ばれた。

 東奥文学賞は、新人の発掘・育成を主眼として、県内在住者または本県出身者を対象に、題材・ジャンルを問わず400字詰め原稿用紙100枚以内の小説を募集した。2010年9月末の締め切りまでに、遠くは沖縄県など県内外から108編の応募があった。1次、2次選考を経て最終候補作は1桁台に絞った。

 最終選考会は10年12月16日、東奥日報社東京支社で開かれ、ともに弘前市出身で直木賞作家の長部日出雄さんと文芸評論家の三浦雅士さんが厳正に審査した。

 贈呈式は1月25日午前11時から、本社7階ホールで行われる。



世良啓さん受賞の言葉/この場所から書き続けたい

 このたび、東奥日報社120年の節目に、記念すべき第1回東奥文学賞を頂く幸運に恵まれたことは、私にとって何より光栄なことと思っています。

 初めて小説らしいものを書いたのは1997年の冬。でも何かに応募しようとしたことはこれまで一度もありませんでした。

 「もっといろんな人に読んでもらった方がいい」。昨夏、この物語を最初に読んでくれた友人の言葉が契機となり、さらに様々な方との出会いが心に化学変化を起こし、じゃあ、と決心したその時、めぐり合わせたのがこの東奥文学賞でした。長部先生と三浦先生が審査されることにも心が動き、締切ぎりぎり、なんとか応募できたことだけでも私には大きな一歩。それがまさか受賞するとは……。驚き、とまどい、嬉しさで、現在混線状態です。

 2001年冬、20枚弱の短篇として生まれたこの作品が、長い眠りから覚めて初の100枚小説として完成した過程こそ、思えばまさに私の「ロングドライブ」だったのかもしれません。このささやかな物語に光をあててくださった審査員の先生方や関係者の皆様、書くことを勧めて下さった方々やこれまで出会ったひとりひとりに、心から深く感謝しています。また、これから読んでくださる方、それからやっぱり家族にも、ありがとうと伝えたい。

 津軽に生まれ、南部や下北で育ち、機会はあっても、いつも何かに引き留められるようにして、結局一度も青森を離れず生きてきた私。それを寂しく思ったこともありました。でもふと自分のしっぽを辿(たど)ってみると、見慣れたはずの故郷には忘れられた物語が山ほど埋もれていた。この画一化していく世界の片隅で、どこを切ってもコテコテの青森人の自分だからこそ見えるものだってあるかもしれない、いまはそう思えます。

 今回の受賞は未熟な私にとって、長い道のりの新たなスタートラインになりました。高校時代にもらった「おまえは何者か」という大切な問いに、私はこの場所から書き続けることで答えたい、そう願っています。

 ◇

 <せら・けい 1967年生まれ、弘前市出身、藤崎町在住。本名・浅瀬石久仁子。弘前大学人文学部卒業後、教員として大湊高校、五所川原高校、弘前中央高校に勤務。40歳を機に退職し、現在は主婦。青森県近代文学館調査員。総合雑誌「北奥氣圏」同人。弘前ペンクラブ会員>




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