東奥日報 特集


パネルディスカッション


■ 新たな遺物は何を語る

パネルディスカッション 栗村知弘・八戸縄文保存協会会長 約七十年前に発掘された是川の出土品のうち、六百三十三点は国の重要文化財に指定されている。選定作業は慶応大が行ったが、その時の状況は。
江坂輝弥・慶応大名誉教授 地方の収蔵庫で保管するので、もし紛失することがあってはいけない。精鋭の品のみ三分の一ぐらいを指定すれば、万が一なくなった時に同じようなものを補充できるのではないか。そういう冗談めいたことを当時の調査官がおっしゃって、指定数があまり多くなかった。私自身は是川中居を発掘した泉山岩次郎・斐次郎氏に、自分の孫のように歓待していただき、遺物を全部写真に撮ることができた。
栗村 是川中居の本年度の調査で、石鏃(せきぞく=石の矢じり)が刺さった板材が出土した。国学院大の小林達雄教授が盾の可能性を指摘し、縄文時代にも戦があったのではないかという見解を示しているが。
江坂 愛媛県の上黒岩遺跡で鹿の脚の骨で作ったやり状のものが、腰に突き刺さった縄文時代早期の男性の人骨が出土した。獲物をうつ時に、誤ってうたれてしまったのだろうと考えられている。このような誤った例が縄文時代にはあり、矢じりが一本刺さった木の板だけで、縄文時代に戦があったと結論づけるのは少し早いような気がする。
岡村道雄・文化庁主任文化財調査官 人体に矢じりが刺さっているということが、弥生時代の専売特許のように皆さんは思っているだろう。しかし縄文時代にも二十数例ほど刺さっている例がある。弥生時代の矢じりが刺さった出土例がすべて戦によるものなのかどうか、そういうことも含め、偏見を持たずにもう一度調べてみる必要がある。
栗村 本年度の是川中居の泥炭層調査で出土した植物などのうち、今の段階で分かっているものは。
工藤竹久・八戸市教委文化課主幹 現段階で分かっている種類はマタタビ、ミツバウツギ、カナムグラ、クマヤナギ属、キハダ、トチの実の若いもの、ヤマブドウ、ドングリ、ニワトコなど。甲虫のさなぎも見つかった。しかしサルナシ、ハシバミなどは今のところ含まれていない。
栗村 是川中居の泥炭層から大きなオニグルミが出土したが、管理や栽培の可能性についてはどうか。
岡村 クリを例として話すことにしたい。縄文時代の始まりからクリはたくさん採られている。他の遺跡で出土したクリを見ると、クリ林を管理していた可能性がある。相当、林を伐採してクリが育ちやすい環境をつくっていた。まだその段階では大きくならないが、大きいものを選びながら植えていき、縄文時代の中期後半になると明らかにクリは大きくなる。しかし、クリも含めて自然の周りの林から採れるものの方が圧倒的に多い。縄文人は栽培種は知っていても栽培をまだ選択しない、農業を選択しない。そのような自然と共生しながらの生き方を選んでいたのではないか。

※写真は八戸縄文保存協会の栗村知弘会長を司会に、是川中居遺跡の本年度調査で出土した石鏃(石のやじり)が刺さった板材などについて意見交換する講師ら

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