2007年8月22日(水) 東奥日報 特集

断面2007

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■ 米印原子力協力問題/首縦に振れぬ被爆国

 安倍晋三(あべ・しんぞう)首相がインドを訪問した。二十二日のシン首相との首脳会談で主要議題の一つになったのは、核拡散防止条約(NPT)に加盟していないインドに対する米国の民生用原子力協力への支持問題。日本は台頭著しい中国をけん制するためにもインドとの戦略関係強化を目指すが、ネックになっているのがこの問題だ。米国はインドと結んだ二国間協定で大幅譲歩、核実験再開にも歯止めをかけられず、日本政府内からは困惑の声も出た。同盟国と友好国が進める原子力協力だが、被爆国日本は首を縦に振れる状況にない。

 ▽政権末期の妥協

 「ブッシュ政権は『形』に残すことを優先してしまった。(成果に焦る)政権末期の妥協だ」

 日本政府の原子力政策担当者は首相のインド訪問直前、米国とインドが先月合意した原子力協力協定を見詰めながら、落胆した表情を浮かべた。

 米国からインドへの原子力協力実現には、日本も加盟する原子力供給国グループ(NSG)の同意が最終的に必要。中国などに加え、日本の動向が今後の焦点となる。

 しかし同担当者は、ブッシュ政権がインドに大きく譲歩したため「(日本が米印原子力協力に同意するのは)不可能ではないが難しくなった」と強調。首相も今回、支持表明を先送りした。

 米国がインドと結んだ協定の問題点は(1)インドが核実験をした場合の対抗措置が不明記(2)核実験後も第三国による核燃料供給を保証(3)米国供給の核燃料の再処理を容認―など。米国からの燃料供給が途絶えても、英国やフランスなどに肩代わりを求める措置にも触れており、制裁強化を進めるイランへの対応と比較して、インドへの厚遇ぶりは尋常ではない。

 ▽ソフトアプローチ

 さらに問題なのは、核兵器開発に転用できる「機微技術」を米国から移転する可能性に道を開いたことだ。協定第五条は、兵器用プルトニウムが製造できる重水炉技術などの提供を視野に入れた協定改定の選択肢にまで言及している。

 日本国際問題研究所の小山謹二(こやま・きんじ)客員研究員は「こうなると何でもありだ。怒り心頭に発した」と言明。米移転の機微技術を使った核軍拡が進む恐れを指摘しながら「平和利用促進を隠れみのにインドの核開発計画を支援する協定とも見てとれる」と語った。

 被爆国から上がる困惑と怒りの声にインドは「日本に強く支持を求めれば、かえって拒否反応を招く」(インド政府高官)として、今回は論理で畳み掛ける「インド式」ではなく「ソフトアプローチ」を採用。「何らかの前向きな発言が欲しい」(インド外務省高官)との本音を極力抑えた。

 インドは現在、原子炉十六基が稼働中で六基が建設中だが、発電量は総発電量の3%にすぎず、米国との協力を機に将来的には総発電量の30%台に乗せたい考えだ。

 ▽後遺症

 安倍首相は参院選後初の外遊で、得意の外交分野で存在感を発揮する考えだったが、選挙前の閣僚による問題発言がここでも影を落とした。

 首相周辺は参院選惨敗の一因ともなった久間章生前防衛相の「原爆投下はしょうがなかった」との発言を念頭に、核をめぐる問題では「慎重対応にならざるを得ない」と言明。

 インド問題に詳しい堀本武功(ほりもと・たけのり)・尚美学園大教授は「日本はインドとの関係緊密化を後退させたくない一方、前防衛相の発言への反発などもあり、(米印原子力協力をめぐっては)難しい判断が迫られている」と語り、問題発言の“後遺症”を指摘した。




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