2005年8月1日(月) 東奥日報 特集

断面2005

INDEX▼

  
■ 巨人戦ナイター中継が岐路/放映権料、値崩れは必至

 プロ野球巨人戦ナイターの七月平均視聴率が8.5%(ビデオリサーチ調べ、以後すべて関東地区)と、月別で過去最低を記録した。長年お茶の間に親しまれてきた巨人戦ナイターはテレビ局の“お荷物”になりつつあり、中継延長の短縮などの動きが表面化し始めた。球団やスポンサーの思惑も絡み、巨人戦中継は今、岐路に立たされている。

 ▽衝撃的な数字

 5.2%。七月二十八日の巨人対阪神戦は、伝統の黄金カードにもかかわらず、消化試合と見まがう今季最低の視聴率となった。オールスター戦以降の後半戦はすべて一けた。巨人戦の低視聴率は、放送業界全体を震撼(しんかん)させている。

 テレビ朝日の早河洋(はやかわ・ひろし)専務は「非常に衝撃的な数字。一般の番組では打ち切りだ」とあきれるばかり。かつて当たり前のように20%超を記録していた「巨人ブランド」は完全に失墜した。

 巨人戦のテレビ中継の放映権料は一試合一億円と言われる。しかし視聴率が低迷を続ければ、スポンサーの減少や撤退が十分に考えられ、来季へ向けた放映権料交渉での値崩れに結び付く。セ・リーグ各球団にとっても年間十試合を超す巨人戦の放映権料が球団経営に占めるウエートは大きいだけに、値崩れは少なくない影響を及ぼす。

 広告代理店関係者は「5%台になるようでは放映権料を下げてもらわないとスポンサーがつかない」。あるテレビ局幹部は「5%台なら一億円といわれる今の対価はない」と言い切る。

 ナイター視聴者層が男性高齢者に偏っていることもあり、民放の営業サイドからは「女性をターゲットにする化粧品会社からは見向きもされず、ナイターの常連だったビール会社でさえ契約は難しい」との悲鳴が。

 実際、巨人戦を数多く抱える日本テレビは、二〇〇六年三月期(単体)の経常利益見通しを大幅に下方修正するなど、経営への打撃は深刻の度を増している。

 ▽被害最小限に

 問題はナイター中継だけにとどまらない。テレビの視聴は継続性があるため、後番組の視聴率も普段より低くなり、中継延長で繰り下がった際はさらに大きな悪影響を及ぼしてしまう。もはやナイター中継を放送した局が、その日のゴールデンタイム(午後七時から十時)視聴率で「民放最下位」になることは、珍しいことではなくなった。

 巨人が首位阪神に大きく水をあけられた今となっては、テレビ局側が中継の延長を打ち切って「被害」を最小限に収めたいと考えているのは間違いない。だが関係者からは「読売新聞社との関係もあり動くに動けない」(日テレ)「横浜ベイスターズのオーナー企業だけに、他社の動向を見てから」(TBS)と慎重な声が目立つ。巨人戦の恩恵を受けてきただけに、派手な立ち回りは避けたいというのが、各局の本音のようだ。

 ▽人気にあぐら

 対応に右往左往する民放各局を、悠然と眺めているのがCS放送の「スカイパーフェクTV!」だ。スカパーは全球団の公式戦の大半をゲームセットまで放送。好調の阪神やソフトバンクは地元での視聴率が高いだけに、同社の重村一(しげむら・はじめ)社長は「民放が放送を打ち切れば、ますますスカパーを見てもらえるようになる」と鼻息も荒い。

 日本テレビの氏家斉一郎(うじいえ・せいいちろう)取締役会議長は「必ずジャイアンツを中心にしたプロ野球の力は回復する」としているが、セ・リーグ連盟幹部は「(巨人は)ファン開拓に取り組まず、人気にあぐらをかいてきたつけが回ってきた」と厳しく指摘。巨人戦が地上波から消え、有料で見なければならない時代が訪れるかもしれない。




HOME