| 2004年8月31日(火) |
|
|
防衛庁は三十一日、総額約五兆円の来年度予算概算要求をまとめた。約一兆円を要するミサイル防衛(MD)導入と引き換えに、戦車や艦船など装備費削減を迫る財務省。防衛庁との攻防は、年末の予算編成や新防衛計画大綱策定をにらみ、早くも過熱している。 ▽主計官の決意 「曽祖父は旧陸軍の軍人で、日露戦争では騎兵。二十世紀初めに、もはや大砲や騎兵の時代ではないと言って、いち早く退役した。その子孫の私が、大砲は古いと言って縮減を迫っているのには因縁を感じます」。財務省の防衛担当、片山さつき主計官は三十一日昼の主計官会議で、装備費削減に強い決意をのぞかせた。 財務省は、MD整備の見返りに、従来の装備体系を抜本的に見直すとした昨年十二月の閣議決定を「錦の御旗」に、来年度予算で装備費の大幅な削り込みを目指す。 財務省幹部は「冷戦が終わったのに、北海道に戦車を多数配備しておく必要があるのか。歳出抑制の流れの中で防衛費だけが聖域ではあり得ない」と強調。理想は「スリムで筋肉質の自衛隊」(主計局幹部)だ。 ▽理論武装 財務省は今春以降、軍事評論家や防衛産業幹部を招いて勉強会を重ね、個々の装備や人員の必要性を見極める「理論武装」を進めた。 主計局は、冷戦終結以降、世界各国で進む兵力や戦力の削減を示すデータを作成。極東地域のロシア軍が一九九〇年代以降、戦力規模を縮小したことや、英国、ドイツの防衛力見直しについてデータをそろえた。 幹部は「テロや弾道ミサイルなどの『新たな脅威』に対応するには組織、装備のスリム化と質的な向上が不可欠だ」と強調。百ページ以上の分厚い資料を用意し、防衛庁側を「論破」する構えだ。 これに対し防衛庁幹部は「欧州の兵力削減と日本を同列に扱う財務省は間違い。東アジアの戦略環境を何も分かっちゃいない」と反論する。 ▽危機感 防衛庁は来年度予算の概算要求で、自衛隊創設以来初めて護衛艦の計上を見送った。北海道に配置された陸上自衛隊北部方面隊の第七師団についても、戦車を大幅に削減、人員を減らして、旅団に「格下げ」することを検討中で、表向き財務省に「恭順」の意を示す。 ある防衛庁幹部は「今年は従来の査定とは違う。財務省は本気だ」と身構える。来年度予算で装備費の大幅削減となれば、年末策定の新防衛計画大綱や新「中期防衛力整備計画」(中期防)に盛り込む兵力、装備の規模も大幅削減は避けられないとの危機感は強い。 七月に防衛庁で開かれた中期防などに関する部内協議。 「陸上自衛隊定員は十六万人とするが、要求は十六万二千人」「戦車は六百両だが、財務省向けの数字は別途検討する」「火砲は七百十門とするが、要求は七百三十門」。高めの数字を持ち出して財務省との折衝に臨み、できる限り削減幅の圧縮を狙う。 また新防衛計画大綱で自衛隊の定数や装備の数量を示す「別表」を廃止し、長期的な防衛力整備に枠をはめない戦術も検討。あの手この手の抵抗を試みる。 しかし、守勢に立たされているのは事実で、制服組幹部の一人は「昨年末の閣議決定に装備削減が盛り込まれた時点で大勢は決した」と、防衛庁の「苦戦」を予測する。 |