2004年4月22日(木) 東奥日報 特集

断面2004

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■ 人質事件対応に海外から批判/いぶかる「自己責任」論

 イラクの日本人人質被害者に対し、日本では「政府の勧告に従わず危険地域にあえて足を踏み入れた当人たちが悪い」とする「自己責任」論が台頭した。対照的にパウエル米国務長官が「リスクを覚悟しなければ、世界は前に進まない」と日本人被害者の活動を称賛した。海外の紛争地帯で民間人が豊富な活動実績を持ち「海外での自国民保護は政府の当然の責務」という認識が定着している欧米各国では、日本政府の対応をいぶかる声が多い。

 ▽雨のように

 「『無思慮で軽率な人々』などという批判が、日本では雨のように降り注いでいる」

 イラクで人質となった四人のうち一人が殺害された事件当事国イタリアのANSA通信は、日本の人質被害者をめぐる状況を「批判と冷淡さ」と題して報道した。

 殺害されたイタリア人人質は、米系企業の警備員としてイラクで働いていた。金銭目的での危険地域への渡航だった。

 しかし、イタリアでは被害者らへの温かい報道ぶりが目立つ。イタリア外務省は、人質家族に心のケアを行うカウンセラーを提供した。

 日本政府はどのように対応したか。閣僚が人質被害者らの言動に不快感をあらわにし、救出費用の一部負担まで求めた。これについて、フランスのルモンド紙は強く批判。パウエル米国務長官も「危険を冒したおまえが悪いと言うことにはならない。彼らを無事に救出する義務がわれわれにはある」と述べ、明確に「自己責任」論を否定した。

 ▽批判と違和感

 イラクではなおのこと、人質被害者への称賛と、日本政府への批判の声は強い。

 バグダッド大のサルマン・ジュマイリ教授は「(『自己責任』論に基づく批判は)イラクの惨状を伝えようとし、子どもを助けようとした若者たちへの態度とは思えない」と話し、人質解放の立役者となったイラク・イスラム聖職者協会のクバイシ師は「人質解放を求めた日本の街頭デモは、まもなく反政府デモに変わる」と語った。

 牧師七人が一時拘束され、事実上のイラク渡航禁止措置をとった韓国。メディアでは「個人の問題にとどまらず、国益にも直結する。国民は政府の警告を聞かねばならない」(朝鮮日報)と政府を擁護する声と「渡航禁止はその場しのぎにすぎない。正義なき戦いへの派兵を撤回すべきだ」(ハンギョレ新聞)との批判の双方がみられた。

 しかし七人を非難する声はほとんどない。韓国の外交通商省当局者は「無事に帰国した人への批判が出ている日本の雰囲気に違和感を覚える」と語った。

 ▽「自衛隊」隠し?

 犯行グループが人質解放の条件として要求した「自衛隊撤退」に関する被害者家族らの発言は、「自己責任」論の台頭とともにかき消された。

 南ドイツ新聞のヘンリック・ボーク東京特派員は、「自己責任」論が自衛隊駐留への国民の疑問やわだかまりを覆い隠すために使われているように見えると指摘。外務省の退避勧告についても「危険についての判断は、ジャーナリスト、非政府組織(NGO)関係者、外交官など個人個人で異なる。すべての個人が危険地域に渡航するべきでないとの考えは奇妙だ」と話す。

 その上で「政権に都合の悪い自衛隊派遣問題、人質事件に関して被害者を非難することで、政府責任の回避を図っているのではないか」と分析した。



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