2003年9月11日(木) 東奥日報 特集

断面2003

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■ 米中枢同時テロから2年/ネオコン、凋落の道

 米中枢同時テロから二年。この間、イラク戦争で先制攻撃ドクトリンを実践するなどブッシュ政権を牛耳ってきた「ネオコン(ネオコンサーバティブ、新保守主義者)」だが、その栄華はつかの間だった。戦後イラク情勢は泥沼化、連日のように米兵が命を落とす。米国民の批判は高潮、ネオコンは一転、凋落(ちょうらく)の道をたどっている。

 ▽血塗られた手

 「あんたはクビよ。米兵を何人殺せば気が済むの」。十日、ワシントンのナショナル・プレスクラブで開かれたラムズフェルド米国防長官の講演会。二階の傍聴席にいた二十代とみられる女性二人組が大声で罵声(ばせい)を浴びせた。

 手元には「血塗られた手」と書いた赤い横断幕。「あんたの外交政策はうそばかり。イラク戦争は不当で不法だ」。警備員に引っ張られ二人は間もなく消えたが、場内は騒然となった。女性たちの叫びが米国民の間で募るネオコンへの不満を象徴しているのは確かだ。

 ワシントン・ポスト紙のウッドワード記者が書いた「ブッシュ・アット・ウォー(邦題・ブッシュの戦争)」によると、ラムズフェルド長官は同時テロの翌日、対イラク攻撃をブッシュ大統領に提言した。この時は穏健派パウエル国務長官らの反対で退けられたが、国防長官はチェイニー副大統領、ウルフォウィッツ国防副長官らと攻撃を強く主張し続けた。

 「ならず者国家」の大量破壊兵器がテロリストの手に渡り、大規模テロが起きる−。同時テロの再発を恐れる米国民の不安心理に訴え、大統領と世論の支持を獲得した。

 ▽「実験」成功

 ネオコンはイラク戦争で(1)ならず者国家に対する先制攻撃(2)即応力のある少数精鋭の軍による短期決戦−など独自の理論を次々と「実験」。バグダッドの早期陥落で理論の正しさが実証されたとして、チェイニー副大統領は「これまでで最も非凡な軍事作戦」と胸を張った。

 だが、勝利の美酒に酔いしれた期間は短かった。イラクの大量破壊兵器が発見されず、内外に「情報操作」の疑惑が浮上。対イラク開戦をめぐる欧州や国連とのあつれきが尾を引き、イラクへの国際的な治安部隊導入や資金協力も実現していない。「すべて一国主義的政策を進めたネオコンのせい」(民主党関係者)と怨嗟(えんさ)の声が集中した。

 フセイン政権を打倒、イラクを民主化することで、イラン、シリアににらみを利かせ、パレスチナ過激派を根絶、中東和平を実現して他の中東諸国の民主化も加速させる−。ネオコンが描いたバラ色の未来地図は紙くず同然となった。

 ブッシュ大統領の支持率は急落。安全保障問題で守勢に立ってきた民主党はイラクや対テロ戦を争点に掲げて政権を攻撃する。対イラク開戦に慎重だった共和党の伝統的保守派も、水面下で批判のトーンを強めている。

 ▽つけは国民に

 ネオコンの代表的論客、リチャード・パール前国防政策委員長は仏紙との会見で「戦争前に反フセイン勢力と深く連携することができなかったことは最大の失敗」と過ちを一部認めた。だが、ラムズフェルド長官ら政権内の強硬派は政策の正しさを強調し、「忍耐が必要」と批判を突っぱねている。

 「ネオコンは大量破壊兵器問題で国民を欺き、米兵はイラクで大歓迎される、とうそをついた。国民は誰を責めたらいいのか分かっている」。保守派の政治評論家パット・ブキャナン氏はこう指摘、ネオコンは消滅の瀬戸際にあると断言する。

 しかし、イラク戦争によって米国がイラクから容易に手を引けなくなったという事実は残る。民主党の大統領候補でイラク戦争に反対したディーン前バーモント州知事でさえ「もはや和平実現なしにイラクから撤退はできない」と認める。ネオコンの「実験」のつけを、米国民が払うことになるのは確実だ。




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