2002年11月6日(水) 東奥日報 特集



■ ブッシュ再選へ助走開始/落とし穴は経済と戦争

 米中間選挙は共和党が上下両院を制し、ブッシュ大統領の二○○四年大統領選再選に向けた助走が始まった。大統領を支える「陰の最高実力者」チェイニー副大統領とカール・ロブ大統領上級顧問(政策・戦略担当)が中心となり、共和党の再選戦略の練り上げが本格化する。

 驚異的な人気で通常なら劣勢のはずの政権与党、共和党に歴史的勝利をもたらした大統領にとって、落とし穴となるのは「経済」とイラクやテロとの「戦い」。景気回復の遅れや、戦争の泥沼化で米兵に多くの犠牲者が出るようなことがあれば、支持は即座に崩れかねない。今回のような予想外の展開が、再選を狙う大統領自身にも逆に降りかかりかねない。

 ▽ブッシュ・ナイト

 米東部時間で日付が六日に変わるころ。共和党の上院奪還が濃厚になると、あるテレビの政治評論家は「ブッシュ・ナイト(ブッシュのための夜)だ!」と叫んだ。

 同時刻、ホワイトハウスではフライシャー大統領報道官が「大統領は歴史をつくった」と胸を張った。その口調は二○○○年大統領選挙で最高裁裁定によってようやく“勝てた”ブッシュ氏が、今回の中間選挙の勝利でみそぎを済ませ、やっと正統性を得たと言いたげだ。

 中間選挙の主役は確かに大統領だった。選挙資金集めのパーティーで募った献金は一億四千万ドル(約百七十二億円)に上った。共和党候補が敗色濃厚だった選挙区十七カ所を最終盤の五日間で遊説し、ほとんどの選挙区で同党に逆転勝利を呼び込んだ。

 失敗すれば自らの威信も傷つく、のるかそるかの勝負。個人の驚異的な人気の力で共和党候補を押し上げた。フロリダ州知事に再選されたジェブ・ブッシュ氏は支持者への報告で「兄に助けられた」と認めた。

 ▽もろ刃の剣

 中間選挙の結果を加え、共和党が知事を置く州の大統領選挙人を合計すると二百三十七人。再選に必要な二百七十人にはもう一歩で、今回の勝利が大統領の基盤を固めたのは確かだ。

 「しかし−」とワシントン・ポスト紙のコラムニスト、デービッド・ブローダー氏は言う。「知事を務めるのは厳しい。各州の財政事情を見れば、二年間難しい判断を迫られ、(その結果が)重荷になる」。州政治を預かることは二年後に有権者の批判の的になる危険もある「もろ刃の剣」。共和党知事への批判はそのまま大統領批判に結び付く。

 ハーバード大のトーマス・パターソン教授(政治学)も「その時の争点次第。戦争の泥沼化や経済問題など(有権者の関心が一つになる)争点があれば(政治家は)もがき苦しむことになる」と戒める。

 ▽人気と不満

 世論調査のギャラップ社が四日発表した大統領の支持率は、昨年の中枢同時テロ直後の八割近いレベルには届かないが、依然63%の高率。中間選挙前の大統領支持率としてはこれまで最高だったアイゼンハワー大統領の61%を破る数字だ。

 その一方で、同じ調査では回答者の47%が米国の現状に「不満」を訴え、51%が「経済は一層悪くなる」と懸念している。

 テロとの戦いからイラクの脅威へと「戦争」が拡大する中、米国民はブッシュ大統領を非難せず結束を選んだ。だが、人気と不満の間にある矛盾に目を向ける争点が現れたとき、ブッシュ再選の行方は一気に不透明になる。


HOME