2002年8月15日(木) 東奥日報 特集



■ 国立の戦没者追悼施設建設を提案/靖国神社と「共存」模索

 福田康夫官房長官の私的諮問機関「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」(今井敬座長)は、国立の戦没者追悼施設建設を年内に提案する方針だ。首相が交代する度、靖国神社を参拝するのかどうかが近隣諸国との関係を左右する状況を打ち破るのが狙い。靖国神社との「共存」を模索する動きが活発化しそうな気配だが、A級戦犯の扱いなど難問も少なくない。

 ▽アレルギー

 「遺族の心情においては靖国神社に対する思いは深いと承知している。遺族の追慕の念を大切にしていきたい」

 「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」会長の瓦力・元防衛庁長官は終戦記念日の十五日午前に参拝後、新たな追悼施設に消極的な考えを示した。

 政府内でも、安倍晋三官房副長官が「靖国神社が慰霊の中心的施設だと思っている」と発言するなど、アレルギーは根強い。

 創価学会を支持母体とする公明党の見解は大きく異なる。この日の街頭演説会では、太田昭宏幹事長代行が「あらゆる国民が平和のために追悼できる新しい施設」の必要性を訴えた。

 ▽追悼と慰霊

 民間宗教施設の靖国神社と、国立の無宗教施設としての新追悼施設は並び立つのか。福田長官は十五日午後の記者会見で「新しい追悼の施設は慰霊の施設ではない」として、「追悼」「慰霊」の違いをあえて強調した。

 政府筋は「新施設ができれば、首相は靖国神社には公式参拝しないというのが暗黙の了解だ」と説明。同時に「靖国神社への私的参拝はOK」としている。

 首相が新施設について「靖国とは別だ」と発言したのも、「靖国神社−私的」「新施設−公的」と区別した上で、私的な靖国参拝を続けたいとの思いからだ。

 こうした「すみ分け」は、自民党内から聞こえる「靖国神社こそ慰霊の唯一の施設」(古賀誠日本遺族会会長)「靖国神社に代わるものという比較論で国立墓地を造るものではない」(野中広務元幹事長)との声も踏まえている。

 ▽個人名刻まず

 靖国神社については一九九九年八月、官房長官だった野中氏が首相や閣僚の公式参拝のネックとなっていたA級戦犯合祀(ごうし)を解決するため分祀(ぶんし)を提唱したが、立ち消えになった経緯がある。

 古賀氏は十五日、分祀について「私自身の考えにないことではない」と、遺族からの自発的な分祀を念頭に置いていることを明らかにした。野中氏は「実現すれば一番望ましい形」と応じた。

 自民党のある閣僚経験者は、合祀(ごうし)対象者の一部の遺族から分祀の了解を得ているとした上で「遺族の一部に強い反対がある。その人たちが納得してくれれば」と期待を示すが、決して容易ではない。

 新施設でも、A級戦犯の扱いが焦点の一つだ。政府筋は「個人名を刻むのではない。誰を対象にするかは個々人の心の問題」と、対象をあいまいにする可能性を示唆。しかし、「灰色決着」に動けば、またぞろ中国や韓国の反発を招く恐れもはらんでいる。



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