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  • 2017年9月25日(月)

世界のヒアリ対策/驚異の繁殖力、NZは根絶/定着許した米は巨額損失

 南米原産の強毒アリ「ヒアリ」が日本各地で相次いで確認され、定着への懸念が高まっている。海外ではニュージーランドが迅速な対応で根絶に成功したが、広範囲で定着を許した米国は毎年、巨額の経済損失を被り、刺されて死亡する人も出た。国際物流の活発化に伴って積み荷に紛れて海を渡り、驚異的な繁殖力で生息域を広げるヒアリ。侵入を水際で食い止められるのか、日本は岐路に立っている。

 ▽まん延

 大型ハリケーン「ハービー」が8月に直撃し、洪水に見舞われた米南部テキサス州などの被災地で異様な光景が目撃された。無数のヒアリが折り重なるように固まり、いかだ状の“船”を作って水面に浮かんで移動、水難を逃れていた。

 しぶとい生存能力に、英国の昆虫学者は「あらゆる状況に備えるタフなやつら」と指摘。米農務省によると、1930年代に米国に侵入し、5月時点で全50州のうち14州と米自治領プエルトリコに生息。南東部5州ではほぼ全域にまん延する。

 住民がヒアリに刺され、アナフィラキシーショックで亡くなるケースも発生した。米食品医薬品局(FDA)はヒアリによる農作物被害や、人的被害に伴う医療費などで年間約50億ドル(約5600億円)の経済損失が出ていると推計している。

 天敵とされるハエの一種を放って生息範囲を広げない取り組みを続けるが、女王アリは1日2千個もの卵を産む。「繁殖力は極めて高く、根絶は現実的ではない」(米専門家)。

 ▽苦闘

 農業と牧畜業が国の屋台骨を担うオーストラリアも苦闘する。2001年以降、たびたびヒアリが見つかり、政府は今年7月、根絶に向け今後10年間で4億1100万豪ドル(約366億円)を投じると決定した。

 ヒアリが最も多く見られるクイーンズランド州ブリスベン郊外の倉庫が並ぶ一角にある空き地に、ところどころ旗が立っていた。アリ塚だ。駆除担当者がわずかに盛り上がった地面を先のとがった器具でつつくと、幾つもの巣穴からおびただしい数がわき出た。さなぎを運び出すヒアリも。

 同州によると、臭いで巣を見つける「探索犬」を活用したり、熱を感知するカメラを装着したヘリコプターで上空150メートルから巣を見つけたりして駆除に当たっている。

 公共の場ではアリ塚に直接薬剤を注入する。漬かったヒアリが巣穴に戻る習性を利用し、地中深くに浸透させる作戦。男性作業員は「刺されると本当に痛い。この空き地だけで幾つ巣があり、駆除にどれだけ時間がかかるのか」とこぼした。

 ▽根絶

 駆除に成功したのはニュージーランド。01年にオークランド空港で発見以来、計3回ヒアリが確認された。第1次産業省の責任者マーク・ブリアンズさんによると、アリ塚を駆除し、半径2キロの範囲内でアリが巣を作る恐れのある鉢植えや土砂などの移動を制限した。

 2キロ内ではソーセージや砂糖水を綿に浸した餌を置いて監視を徹底。粘り強い対策を3年続け、政府は09年に根絶を宣言。費用は約900万ニュージーランドドル(約7億円)で済んだ。

 素早い対応の重要性を訴えるブリアンズさんは「日本は早期に発見できた。ニュージーランドと同じシナリオが通用するのでは」と語り、駆除には十分な予算と、国と地域社会の連携が欠かせないと強調した。(ニューヨーク、ブリスベン共同=高木良平、板井和也)

(共同通信社)

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