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  • 2017年9月25日(月)

金正恩氏が異例の声明/米中共闘に捨て身の対抗/「太平洋で水爆」に臆測

 米朝の緊張激化が止まらない。トランプ米大統領は北朝鮮の「完全破壊」に言及。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は「超強硬対応措置」を警告する異例の声明を発表した。米政権は中国を巻き込んで経済封鎖に出る構えだが、北朝鮮側は太平洋上での水爆実験の可能性まで持ち出した。捨て身にも見える脅しは本気なのか。日本政府内では臆測と暴発への懸念が交錯する。

 ▽未曽有

 「私自身の全てを懸け、わが国の絶滅をわめいた米統帥権者の妄言の代価を必ず支払わせる」

 人民服姿で正面を見据え、どこかしら悲壮な面持ちで声明を読み上げた金氏。「必ず」と3度繰り返し、国連演説でのトランプ氏による「完全に破壊」発言に報復する不退転の決意を強調した。

 最高指導者が自らの名義で声明を発表したのは、故金日成(キム・イルソン)主席、故金正日(キム・ジョンイル)総書記の時代にもなかった未曽有のことだ。「最高指導者の発言は撤回できず、必ず実行すべきとされる」(北朝鮮専門家)。金氏は対抗措置について「断行を慎重に考慮する」とも語ったが、韓国統一省関係者は「声明の形式や内容からみて、実際の挑発につながる可能性が小さくない」と指摘する。

 平壌(ピョンヤン)市内では市民生活や交通量に目立った変化は見られず、国連安全保障理事会決議による制裁の影響はまだ感じられない。一方、街中に「制裁決議を全面排撃」「われわれの前途は阻めない」と書かれたポスターが張られ、制裁の影響に備え国民を“精神武装”させようとの意図がにじむ。

 ▽証明

 「おそらく水素爆弾の地上試験を太平洋上で行うということになるのではないか」。ニューヨーク訪問中の李容浩(リ・ヨンホ)外相は21日夜、記者団にこう述べた。普段は寡黙な李氏が具体的な措置内容に触れるのは異例で、指導部内で議論されてきた選択肢の一つとみられる。

 放射性物質をまきちらす大気圏内実験は1980年に中国が自国内で実施したのが最後。太平洋上では74年のフランスが最後だ。6回も地下実験を行った北朝鮮が今になって太平洋上での実験を言いだしたのはなぜか。日本政府関係者は「実際にやるかどうかは別として核保有は本当だと言いたいのだろう」と語る。

 小野寺五典防衛相は、北朝鮮が中距離弾道ミサイルや大陸間弾道ミサイル(ICBM)に水爆を搭載して日本上空を通過させ「何らかの実験」を行う可能性を指摘、「深刻に受け止めなければならない」と語った。

 防衛省内では北朝鮮が今後、実験海域を予告するシナリオが取り沙汰され、「大気圏に再突入させずに宇宙空間で爆発させれば、環境への影響は抑えながら核のミサイル搭載を実証できる」(幹部)との見立てもある。

 ▽混乱

 「外国の銀行は選択を迫られる。米国とビジネスをするか、無法な政権との取引を手助けするかだ」。トランプ氏は21日、日米韓3カ国の首脳会談冒頭で追加制裁の大統領令署名を発表。国際金融から北朝鮮の締め出しを狙うものだ。中国の銀行は同調するように北朝鮮関連口座の取引を制限。「窒息している」(ヘイリー米国連大使)北朝鮮経済にさらなるダメージとなるのは確実だ。

 トランプ氏は米朝対話が可能か記者団に問われ「できないことはないだろう」と語った。しかし「攻撃的な発言が多く、(本当に対話する気があるのか)メッセージは混乱している」(ヘリテージ財団のクリンナー氏)。

 「窮鼠(きゅうそ)猫をかむということにならなければいいが」。日本政府関係者は不安な胸の内をうかがわせた。(平壌、ニューヨーク、東京共同)

(共同通信社)

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