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  • 2017年9月12日(火)

北朝鮮制裁決議の最終案判明/中国、北朝鮮の命綱譲らず/ルビコン川渡る燃料制限

 北朝鮮に対する新たな国連安全保障理事会の制裁決議最終案が判明した。北朝鮮への原油の供給は現状維持。その大半を担う中国はかろうじて金正恩(キム・ジョンウン)体制の“命綱”を確保した。しかし、採択されれば、北朝鮮国民の生活も支える燃料の規制に初めて踏み込むことになり「ルビコン川を渡る内容」(日米外交筋)。トランプ米政権は段階的な禁輸強化への足掛かりとしたい考えだ。

 ▽軍の油

 「北朝鮮への石油禁輸を受け入れますか」。ニューヨークの国連本部2階。原油、石油精製品、天然ガスの全面禁輸を盛り込んだ制裁決議原案の内容が伝えられて以降、安保理議場の入り口付近では、中国とロシアの大使らが姿を見せるたびに、記者団から何度も大きな声が飛んだ。

 「最強の措置」(米国のヘイリー国連大使)を訴えた米国による原案の中でも最も注目された措置だったが、共同通信が10日入手した最終案では、原油は過去12カ月の調達総量を今後の年間上限に定めた。

 中国はパイプラインを通じて原油を年間50万トン前後、事実上無償で北朝鮮に供給してきたとされる。市中に出回る輸入の石油精製品と違い、ほぼ全量を軍や傘下機関が独占する「軍の油」。金体制の統治基盤を維持する生命線と言え、北朝鮮関係者によると、有事に備えて何年も前から一部を備蓄している。

 ▽先手

 最終案は、石油精製品の北朝鮮への供給や輸出を年間計200万バレルに制限。一般的な比重で換算すると、軽油なら25万トン前後、ガソリンなら23万~25万トン程度だ。韓国外交筋は「現在の北の輸入量の約半分に当たる」と推定、原油と合わせた燃料調達量の約30%を遮断することになるという。

 日本政府当局者も「経済活動の根幹である燃料に手を付けた点で画期的な内容だ」と評価する。

 さらに、最終案は天然ガス液(天然ガソリン)や天然ガス副産物の軽質原油コンデンセートを全面禁輸した。韓国のエネルギー経済研究院の金景述(キム・ギョンスル)研究員によると、これまで北朝鮮での需要は確認されていないが「原油などの禁輸が強化された場合、代替エネルギーとしての活用は可能だ。将来的な逃げ道をふさぐための先手だ」とみる。

 ▽勝算

 最終案は北朝鮮労働者に就労許可を出さないよう求め、繊維製品の輸出禁止も盛り込んだ。韓国外交筋は「合わせて約10億ドル(約1085億円)の外貨獲得を防ぐ効果が期待される」とした。

 8月に採択された制裁決議は北朝鮮の主要外貨収入源だった石炭や水産物の輸出を全面禁止。残るわずかな収入源も遮断するものだ。「ガソリンや軽油を買いたくてもその金がなくなる。制裁で厳しい上限を設けなくても燃料輸入量は激減する」(元北朝鮮当局者)

 一方で、最終案は、ほとんどが中国からの委託加工である繊維製品の輸出について決議採択前に契約書を交わした場合は、90日以内は輸出を認めた。北朝鮮労働者の受け入れについても契約済みであれば適用を除外し、それぞれ2万人前後を受け入れているとされる中国、ロシアに配慮した。

 禁輸拡大への枠組みを確保しながら、大幅譲歩した最終案。日米外交筋は「これで中国、ロシアが拒否権を発動すれば国際社会から非難される。米政府は勝負に出る価値があると判断している」と語った。(ニューヨーク、ソウル、東京共同)

(共同通信社)

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