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  • 2017年9月6日(水)

北朝鮮への石油禁輸案/「生殺与奪権」探り合い/中ロ、対米けん制の裏で

 北朝鮮の核武装阻止へ向け、国際社会が石油禁輸に踏み込めるかが焦点になってきた。鍵を握るのは供給国の中国とロシア。中国にとって石油は金正恩(キム・ジョンウン)体制に対する影響力の源泉。10月の共産党大会を控え、国内で弱腰姿勢を見せられない習近平(しゅう・きんぺい)指導部は「供給制限」も見据える。一方、ロシアにとっても北朝鮮への燃料供給は対米けん制の切り札だ。北朝鮮の“生殺与奪権”を巡り、中ロは腹を探り合う。

 ▽疑心暗鬼

 「北朝鮮が核・ミサイル開発を中断し、米韓が合同軍事演習を中断するよう求める。中ロの提案だ」(中国の劉結一(りゅう・けついち)国連大使)。「ロシアと中国によるロードマップ実行を目指す」(ロシアのネベンジャ国連大使)

 北朝鮮の核実験を受け、4日開かれた国連安全保障理事会の緊急会合。中ロの大使は互いの国の名を挙げて結束の固さをアピールした。

 だが水面下では疑心暗鬼が渦巻く。「もし中国が先に石油禁輸をしたら、ロシアがその分、肩代わりするだけだ。中国は北朝鮮から『敵国』扱いされ、影響力を完全に失う」。中国の北朝鮮研究者はこう指摘する。

 石油禁輸に踏み切るなら必ず中ロが同時に行い、裏で流していないことを互いに監視する必要があると主張。「さもなければ中国は対米交渉の切り札である“オイルカード”をロシアに渡すことになる」と警戒する。

 北朝鮮も中国の足元を見るかのように、植民地支配からの解放記念日の8月15日、金正恩朝鮮労働党委員長がロシアのプーチン大統領と祝電を交換。習国家主席との祝電交換は伝えられず、ロシアとの友好関係を重視する姿勢を示してみせた。

 ▽顔に泥

 今回の核実験は、中国が「大国外交」の集大成と位置付ける新興5カ国(BRICS)首脳会議の会合初日の3日に実施された。北朝鮮は5月には、習氏が推進する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の国際会議の開幕日に、新型中距離弾道ミサイル「火星12」を日本海に発射した。

 発射方向をひっくり返せば、ちょうど共産党・政府所在地である北京の「中南海」に着弾する距離を飛行。習指導部は「北朝鮮が中国にとっても安全保障上の脅威だと感じ始めている」(別の中国の北朝鮮研究者)。

 習氏は2度にわたり顔に泥を塗られ、厳しい対応をしなければ「国内で弱腰批判が出かねない」(香港紙記者)状況だ。

 石油供給制限も視野に入れるが、北朝鮮の暴発や不安定化のリスクをはらむ。習氏はBRICS会議の期間中、公の場で北朝鮮問題には一切言及しなかった。5年に1度の重要会議である共産党大会を控え、国内外の安定を最重視する習氏のジレンマは深い。

 ▽米軍阻止

 「北朝鮮の政策は変わらず、多数の住民の苦難は大幅に悪化する」。プーチン氏は5日の記者会見で、核実験を強く非難しつつも、制裁強化は「人道上の問題」であり、無益だと切り捨てた。

 北朝鮮問題は、ウクライナ問題を巡りロシアに制裁を科してきた米国に譲歩を迫る格好の取引材料だ。プーチン氏は会見で、ロシアが北朝鮮に輸出する原油・石油製品は四半期で約4万トンだと明かし、ロシアの全輸出量に比べれば「ゼロに等しい」とも語った。

 ロシアは首都モスクワから遠く離れた北朝鮮の核開発を直接の脅威とは捉えておらず、むしろ北東アジアでの米軍の増強阻止が優先課題だ。ここにも“中ロ共闘”の余地がある。(アモイ、ニューヨーク、北京共同)

(共同通信社)

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