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  • 2017年2月2日(木)

ネット検索削除に基準/新たな権利「芽」は育つか/今後の判例に期待も

 インターネットの検索結果の削除を認める条件を巡り最高裁が示した初の統一基準には、欧州で定着しつつある「忘れられる権利」についての言及は一切なかった。削除にはハードルが設けられたが、デマや名誉毀損(きそん)など公共性の低い情報は、むしろプライバシー保護を優先する司法判断が増え、削除されやすくなるとの見方もある。新たな権利の芽は日本でも育つのか。

 ▽言及なし

 最高裁が決定を出したのは、自らの逮捕歴に関する検索結果の削除を男性が求めた裁判。さいたま地裁が「忘れられる権利」を認め削除を命じたことで注目を集めた。

 ところが最高裁決定にこの権利について言及した部分はゼロだった。「削除はプライバシー保護が情報公表より明らかに優越する場合だけ」との基準は、検索サイト側に甘い内容にも見える。

 だが、申し立てを退けられた男性側の神田知宏(かんだ・ともひろ)弁護士は「厳しい判断とは思わない。依頼者には残念だが判断の枠組みとしてはふさわしい」とむしろ好意的に受け止める。忘れられる権利についても「日本で議論が始まったばかりなので触れなかったのだろう」と、言及の有無にはこだわらない姿勢だ。

 神田弁護士は最高裁決定が「明らかに優越」かどうか判断する材料として、記事の内容や公表による被害の程度などさまざまな要素を挙げた点に着目。「事件報道などは難しいが、うそが書いてあると分かれば名誉毀損の記事は削除しやすくなるのでは」と期待する。

 ▽欧州で定着

 これまで日本では、ネット上にいつまでも残る個人情報の削除を求められるかどうかの司法判断が定まっていなかった。一方、先進的な判例のある欧州では「忘れられる権利」が一般的なルールとして定着しつつある。

 欧州連合(EU)司法裁判所は2014年5月、自宅の競売情報の削除を米グーグルに求めたスペイン人男性の訴えを認め、「当初は正しい検索処理も、時間がたてばプライバシー保護に反することがある」と削除を命じた。

 この判決を受け、フランスの規制当局は15年、グーグルに特定の個人情報にアクセスできなくなる措置を講じるよう要請。グーグルは応じず、16年3月に罰金の支払いを命じられた。欧州議会が同年4月に可決した「EU一般データ保護規則」には個人の持つ「消去権」が明記されている。

 ▽積み重ね

 ネット検索が日常生活と切り離せなくなっているのは日本も欧州も変わらない。法的な被害救済を求める人は今後さらに増えるとみられる。

 総務省が支援する「違法・有害情報相談センター」に寄せられた検索結果削除などの相談は、昨年3月までの1年間に5200件と相談を始めた10年の4倍近い。相談の多くは名誉毀損やプライバシー侵害に関する内容だ。

 インターネット上の情報削除に詳しい高橋未紗(たかはし・みさ)弁護士は今回の最高裁決定について「検索サイトを『表現者』と認めたのは、表現に伴う責任を取らせるという一歩進んだ考え方だ」と指摘する。

 削除される条件と考慮すべき要素を挙げただけで具体的な一線を明示しなかった今回の決定。高橋弁護士は「デマがきっかけでプライバシーを公表される事案では削除を認められる素地が広がるのでは」とみている。欧州の消去権のような考え方が日本にも定着するかどうかは今後の司法判断の積み重ねによって決まりそうだ。

(共同通信社)

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