| 2010年1月31日(日) |
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書き出しは「もしも君が、ほんとにこの話を聞きたいんならだな」。原文が50年代の若者言葉でつづられている長編青春小説を訳すという「難事に挑戦したのは私の暴挙。成功しているか、それは大方の判断にまつほかはない」と解説で触れているのも野崎さんだ。 主人公の高校生は、既成の価値観に縛られないで“インチキな大人の世界”に体当たりしていく。米国文学の翻訳ならこの人と言われた野崎さんの名訳も得て、日本だけで累計約250万部。今も愛読されている。野崎さん訳を読んで感銘したという村上春樹さんが7年前に出した新訳本も売れている。 極端に寡作で、60年代半ばには執筆をやめた。その以前から田舎に引きこもる隠とん生活をしてきたサリンジャーさんは、この小説を日本語に訳す際、作者の略歴、訳者解説を加えてはならないと注文をつけたそうな。 本の奥付にあった訳者紹介が随分あっさりなのはそのせいか。訳者解説は載っている。15年前に逝き、お元気なら93歳の野崎さんが「難事に挑んでよかった」と言えば、91歳での悲報が伝えられたサリンジャーさんは「なぜ解説したの?」。天国でそんな会話が交わされているかもしれない。 |