2009年11月16日(月) 東奥日報 天地人



 イチョウ並木の落ち葉がカサコソと風に舞い、歩道には紅葉が張り付いてカラフルな文様を描いていた。週末、和服姿の女性が目に付いた。利休色の着物につづれ織りの帯がよく似合う。茶席に向かうのだろう。炉開きの季節だ。

 夏用の風炉(ふろ)をしまい込み、冬用の炉を開く。切り火をして火の神様に無事を祈る。湯がたぎり、釜が鳴る。夏の間密封していた茶葉のつぼの封を切って、ひきたての抹茶でもてなす「口切(くちきり)」の茶事に由来する、厳かで華やぐひとときは「茶人の正月」と呼ぶにふさわしい。

 茶の湯はかつて男の文化だった。信長や秀吉にとっては権勢を誇示する道具の一つだったし、大名や公家、豪商に広がったそれは男のたしなみだった。時代は変わって女のたしなみとなったのは、男がやわになってしまったからか。わび、さびを解さない世知辛い世の中のせいか。

 静寂の中で様式美にかなったお点前をすると気持ちがしゃんとする。けいこの後のおしゃべりがまた楽しい。最近読んだ本の話、おもしろかった映画の話、効果的な健康法、プライベートな悩みごと。気の置けない同士が本音で語り合えるから女性にもてるのだろう。ストレス解消にもってこいだ。

 畳に正座し、香が漂う空間に身を置くと心安らぐ。これを「和ロマテラピー」と呼ぶ。有吉玉青さんが随筆「お茶席の冒険」(講談社)に書いていた。抹茶はビタミンたっぷり、体にいい。「抹茶を飲めば太らない」と呪文(じゅもん)を唱えながら、そっとお菓子に手を出すそうだ。


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