2009年4月24日(金) 東奥日報 天地人



 らちが明かない。物事が片付かない、決まりがつかないことを言う。らちは漢字で埒、馬場の周囲に設けられた柵と「広辞苑」にある。では、どんな風景から生まれてきた言葉なのか。近刊の「地団駄(じだんだ)は島根で踏め」(わぐりたかし、光文社新書)が、その辺を考察している。

 著者は放送作家で、右の書は語源を尋ねる旅から生まれたそうだ。それによると埒は、京都の上加茂神社の競馬(くらべうま)に由来するという。落馬など不測の事態に備えた柵のことだと。この行事は古くから伝わり、神官や一族の人たちには大事な儀式だった。それで万端が済んでようやく一息、埒が明いたと。そんな話を紹介して、なかなか示唆に富む。

 さて同じ京都にあり、言葉にも縁が深い団体の方は、どうも埒が明かない状態が続く。日本漢字能力検定協会のことだ。トップ父子が理事を辞任したのはいいが、ファミリー企業との取引で動いた巨額の金は、ますます不透明さを濃くしている。公益法人にあるまじき商法で落馬したが、周りはいまだ片付かぬ図のようだ。

 前理事長らの協会私物化との批判が広がる中、不明瞭(ふめいりょう)な株の穴埋めなども浮上してきた。元日弁連会長が新理事長となり、告訴も視野に入れた事態へと。折しも「今年の漢字」で知られる清水寺の貫主(かんす)が、協会の理事を辞任した。恒例行事の会場提供にも、寺側は継続を保留した。

 地に落ちた漢検商法の波紋は広がるばかりだ。これでは検定に足も向かなくなる。一日も早く埒を明けることだろう。


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