2009年3月3日(火) 東奥日報 天地人



 なぎは漢字で凪と。風がやんで波が収まることを言う。風の省略形と止を組み合わせた字形が、意味をよく伝えている。日本の知恵が生んだ和製漢字、つまり国字である。たこは凧と書き、木枯らしは凩とも。これらも同じ字のつくり方による国字だ。

 漢字の読みにいささか難のある人に当てこするわけではないが、何やら麻生政権のきのう、きょうを思わせる字の風景でもあろうか。予算案は衆院を通り、年度内成立が見えた。つかの間の凪が広がる。走れども揚がらず、下降するばかりの凧は、支持率のほどに見合う。凩の乱流は四方から迫る。ますます募る不況風、早期解散を求める民の風、自民党内に兆してきた麻生おろしなどと。

 こんな図が、さて総選挙にどう収斂(しゅうれん)していくのか。その辺がどうにも模糊(もこ)としたまま、危機の中の遅々とした歩みが続く。職を失った人が月を追うごとに膨れ上がり、求人の場に殺到している。きのうの本紙にあった弘前の合同面接会などが、伝えて余りある。世のじりじり感は、もはや沸騰点の域か。

 経済のさらなるカンフル剤と外交をてこに解散を描く首相。不信任や問責をうかがいつつ機を狙う野党。表紙を変えねば戦えないと、論もどこやらに蠢動(しゅんどう)する与党。難解な三次方程式にも似た構図が、あすを一層見えにくくしている。

 花に嵐か、メイ・ストーム(五月の嵐)か。はたまた任期散るまでの混迷か。政治の常道は、民の声の赴くところにあり。そう思いつつ一票を使える日に備えるか。


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