2009年1月14日(水) 東奥日報 天地人



 剣が峰とは富士山頂の噴火口の周りのこと。日本最高峰の噴火口だから気温が低く、吹きつける風は尋常でない強さに違いない。踏ん張って立っているのも大変だろう。

 大相撲での剣が峰は、土俵の俵に足がかかって後がない大ピンチを指す。横綱という最高位にいる朝青龍は、三場所連続休場し、痛めたひじが完全に治らないまま初場所に出場した。引退か復活か。進退を懸けた戦いが続くが、ここまでは土俵際に追い詰められたりしながらも持ちこたえている。

 立ち合い前から鬼のような形相になる。気迫を前面に出す。悲壮感も漂う。そんな姿にファンも朝青龍嫌いも引きつけられ、歓声を上げる。「声援が多くて、うれしいね」とは初日の言葉だ。ところが、朝青龍と反対に、国政の最高位に座っている麻生首相には土俵の外からの温かい声援が少ない。

 最新の内閣支持率は、ついに20%を割った。選挙を有利に導く技にしたかった定額給付金の評判も悪くなるばかり。土俵の下で支えてくれるはずの閣僚経験者の一人は、そっぽを向いて離党した。土俵上でにらみ合う強敵の小沢・民主党は、早期解散を迫って攻勢を一層強める構えだ。

 首相に求められているのは何か。国民を守る具体策を果敢に実行する“白星”を一つずつ重ねながら、折をみて決戦に踏み切ることかもしれない。それができず、ぶれも止められないと、逆風吹き荒れる剣が峰で踏ん張り切るのは難しいのではないか。土俵の外は、奈落とも言うらしい。


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