2006年10月4日(水) 東奥日報 天地人



 小アジアとロシア南部に接する黒海沿岸地方。はるか昔、アマゾン伝説があった地だ。狩猟の女神アルテミスを守護神とした女人国に、勇猛な女性たちが住んでいた。アマゾネスと呼ばれた彼女たちは騎馬に秀で、戦争に狩りに威勢を振るった。

 この伝説には、ギリシャの英雄ヘラクレスや東方遠征したアレクサンドロス大王も登場する。古代の大いなるロマンは、さまざまに形を変え後世に伝わった。例えば中世ゲルマン伝説の女戦士・ワルキューレも、その系譜だろうか。ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環(ゆびわ)」でおなじみの天かける女たちだ。

 現代にアマゾン伝説を探すなら、レスリングの女性たちが似つかわしいか。鋼のようにしなやかな体、みなぎる力感。やわな男たちは脱帽のほかあるまい。先日の世界選手権では、日本勢が全階級でメダルを獲得した。アテネ五輪も強かったが、それをしのぐような無双ぶりだ。

 とりわけ八戸出身勢の活躍は見事だった。伊調千春選手がアテネ後の不調を脱し、復活の金で先陣を切った。坂本日登美選手も二年連続四度目の金で続く。そして伊調馨選手は盤石の四連覇、自らの連勝を七十四に伸ばした。坂本襟選手も踏ん張って銅だった。

 彼女たちが見据えるのは二年後の北京五輪。伊調姉妹は、アテネで果たせなかった二人そろっての金を目指す。坂本日登美選手は、無敵の吉田沙保里選手がいる階級へ進む。古代五輪からの伝統を持つ格闘技に、現代の女人力の挑戦は続く。


HOME