2000年10月17日(火) 東奥日報 天地人



 「しなやかで、すがすがしい、隠しごとのない県政を」。長野県知事選で当選した作家の田中康夫さんの言葉。この訴えが幅広い共感を呼び、県政に新風を吹き込んだ。県庁OBが四十年余もトップに座り続けてきた土地柄。田中さんの発言を裏返せば、硬直し、よどんだ、息苦しい空気があったから、県民は変化を求めたのだろう。

 官と民の対決。県議や首長が顔をそろえる組織と草の根の戦い。行政のプロと全くの素人。いろんな意味で注目された選挙だが、結果は大差で民が勝利した。行政や政党が民意とかけ離れて突っ走れば、手厳しい一票を投じる。長野の人たちの健全な感覚を見た。

 五輪誘致や新幹線の開通でにぎわった地域も、うたげの後は沈滞ムードだったよう。県の台所は巨額の借金を抱え、公共事業頼みの経済も落ち込んだ。流れを変えなければ、という県民の思いが田中さんを押し上げた。

 翻って、わが県政はどうだろうか。冬季アジア大会問題で、なお引きずる県民の不信。新幹線の建設の先に待ち構える並行在来線の難問。危機的な財政。箱もの依存の経済。何やら長野県と似たところがないか。そう言えば議会の総与党化も。

 五年前、木村県政が発足した時、多くの県民は変革の一票を託したに違いない。今、二期目の折り返し近くに差し掛かった政権は、そんな思いを十分くみ上げているだろうか。「隠しごとのない県政」「自由にものを言える県政」。長野の風を変えた言葉に学ぶことはないか。


HOME