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  • 2017年3月21日(火)

天地人

 蟷螂(とうろう)はカマキリの漢名である。昆虫を捕食しやすい前脚の形から「鎌切(かまきり)」「斧虫(おのむし)」ともされる。<蟷螂や二つ向きあふ石の上>正岡子規。2匹が石の上で緊迫感をもって対峙(たいじ)している。村松友視さんは<剣士の果たし合いに通じる殺気のようなものが伝わってくる>とエッセー『カマキリの神秘』に書いた。

 豊洲問題についてきのう、移転を決めた当時の知事・石原慎太郎氏を東京都議会百条委員会が証人喚問した。移転先に豊洲を選んだ理由や、用地取得の経緯など、記者会見での主張の域を出る証言は引き出せなかった。

 必要以上に元知事の功績を持ちあげたり、質問がくどすぎて再質問を求められたり…。時間だけがすぎてゆく。委員の主張を聞きたいのでない。歯がゆい思いをした人も多かったのではないか。いらついた傍聴者が2人、不規則発言で退場となった。

 会見に臨むときは「果たし合いに出かける侍の気持ち」と話した。この日は「天気晴朗なれど波高し」と心境を表現した。喚問は最後、元知事に苦笑いをされてゲームセットであった。

 <蟷螂は馬車に逃げられし馭者(ぎょしゃ)のさま>。中村草田男はカマキリを、走らせる馬に向かって鞭(むち)を振るう御者に見立てた。馬車に逃げられたとまで踏み込み、滑稽感を漂わせる。逃げられた果たし合いの場の剣士は、はたしてどちらか。

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