| 2010年3月9日(火) |
「金多は酒好き、おっちょこちょいで、お人よし」「豆蔵は少々けちでまじめだが、人のために尽くすタイプ」−。津軽地方に伝わる「金多豆蔵(きんた・まめじょ)」人形芝居は、こんな口上で知られている。 金多と豆蔵が津軽弁で繰り広げる掛け合い漫才は抱腹絶倒、世相や社会風刺を盛り込み、人情の機微をつくセリフ回しが観客の笑いを誘う。 「金多豆蔵」は明治の末に始まり、1世紀の歴史を持つ。現在の座長は3代目・木村巌さん。中泊町で農業を営む傍ら、各地で公演を続けている。 昨年、「金多豆蔵」が中泊町の無形民俗文化財に指定された。常設の芝居小屋が完成し、9月から定期公演が始まった。 小屋は津軽鉄道の発着駅・津軽中里駅に直結していることから、列車を利用した新しい観劇スタイルが提案されている。 北五地方の冬の風物詩といえば津軽鉄道の「ストーブ列車」が知られるが、人形芝居と組み合わせた旅行商品も企画され、団体客が訪れるようになった。 まだ始まったばかりで、浸透はこれからだが、人形芝居とローカル鉄道という独特の旅行商品を西北地域の観光資源として活用していきたい。 座長の木村さんは語りのほか、右手で金多、左手で豆蔵と1人で2体の人形を操る。助手を務めるのは姉の三上輝枝さん(青森市)。両手がふさがっている木村さんに代わって、人形や小道具の入れ替え、効果音などを担当している。 「出稼ぎ金多」「弥三郎の嫁とアバ」「鬼人お松」「人形手踊り」など演目は十数種類に上る。全貌(ぜんぼう)はDVDに収録され、09年12月発売された。全編津軽弁のため、共通語の字幕スーパーが付いている。 常設芝居小屋は中泊町が国の交付金を活用して整備した。定期公演を契機に地元の主婦らが「金多豆蔵応援隊の会」を結成。上演日に合わせ、芝居小屋の前で地元産品の直売会を開いている。「玄米もち」や金多豆蔵のシールを張ったオリジナル商品も開発され、常連客のほか、会を支援するサポーターも登場、地域おこしの輪が広がっている。 津軽中里駅では津鉄応援直売会もストーブ列車の発着に合わせ、週3回、販売所を開くなど駅周辺ににぎわいが生まれつつある。 東北新幹線新青森駅開業を控え、こうした取り組みを注目していきたい。 ただ、「金多豆蔵」は毎月第1土曜日に2回だけ上演するため、観光客が気軽に見られるわけではない。地吹雪など天候に左右され、入場者が落ち込む場合もある。駅に飲食スペースがないとの指摘もある。 特に観劇と食事を組み合わせることができれば旅行商品として魅力が増す。実現に向け方策を探りたい。 西北地域を訪れる観光客は五所川原市の立佞武多(たちねぷた)の館と「斜陽館」のある金木に集中する傾向がある。津軽鉄道も津軽五所川原−金木駅間で特に観光客の利用が多い。 「金多豆蔵」を魅力的な旅行商品に育て、観光客を金木以北にも誘導できるよう、小泊・竜飛方面とつなぐ観光ルートの中で位置付けたい。 |