2010年2月27日(土) 東奥日報 社説



■ 歩いて楽しめる魅力を/十和田湖畔の景観

 全国的な知名度を誇る十和田湖の集客力が鈍っている。

 2002年12月の東北新幹線八戸駅の開業効果は半年しか続かず、宿泊客数は伸び悩んだままだ。今年12月の全線開業に期待しつつも、同じ繰り返しへの不安は残る。

 団体客主体から個人客、小グループ客中心となった観光スタイルの変化への対応が遅れたのではないか。そう指摘する関係者の見方を地元の多くも認める。

 道路や広場、散策路、公共施設を、観光客が歩きながら楽しめる造りにする。旅館・ホテル、土産物店などの店先を魅力的に工夫する。景観の改善が大きなポイントとなるだろう。

 出口の見えない衰退から復活へ。驚くべき再生を果たした県外温泉地の取り組みに学ぶべきヒントがありそうだ。

 十和田湖畔地区まちづくり協議会は2月中旬、これまで重ねている勉強会の一環として「景観まちづくりフォーラム」を開いた。

 手本にしようと招いたのが、山形県尾花沢市にある銀山温泉で温泉組合副組合長を務めている松本孝行さんだ。

 銀山温泉は、大正から昭和初期にかけて建てられた川沿いの木造旅館の景観が、来訪者を魅了してきた古くからの温泉街だ。

 しかし、魅力的な景観の素材を生かし切れずに停滞。散策路が狭いうえ、車の乗り入れが多く放置車両も目立つようになり、バブル期以降、温泉街は衰退したという。

 01年、危機感を持った地元有志が立ち上がった。おもてなしの心で魅力的な温泉街をつくろうと、専門家のアドバイスを受けながら、散策路にベンチを設置し、車両の乗り入れ規制に取り組んだ。

 松本さんによると、「これだけの工夫」で結果がすぐ出た。来訪者が楽しそうに散策をするようになったのだ。取り組みの効果に疑心暗鬼だった人々も活動に加わるようになった。

 「大正ロマン漂う木造旅館が連なる温泉街」。そのイメージを守りながら、老朽化の進んだ共同浴場の移設、跡地への足湯設置、電線の地中化など景観の改善に取り組んだ。

 もちろん、温泉街が一体となった「おもてなしの心」を忘れずに、ソフト面の充実にも気を配った。その結果、旅館の稼働率は90%と驚異的なものとなり、温泉街は見事に再生を果たしたという。

 銀山温泉のアドバイザーを務めたのは、十和田湖の景観フォーラムで基調講演をした東京大学アジア生物資源環境研究センターの堀繁教授だ。

 堀さんは講演の中で、銀山温泉に学びたいポイントとして「極上のもてなしの整備」「一致団結しての行動」「ハードとソフトのバランス」の3点を挙げた。

 そして、十和田湖畔について「休屋に人が集まらないのは休む所がないから」「道路は車のためにあり人を脇に追いやっている」と苦言を呈し「もともと潜在する力、可能性は高い。あとは人の工夫と魅力づくりだ」と指摘した。

 八戸駅開業時の二の舞いは避けたい。開業効果を最大限に生かし、持続できる工夫を実行に移すときだ。


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