2010年2月26日(金) 東奥日報 社説



■ 国会では十分な議論を/殺人の時効廃止答申

 公訴時効の見直しを検討していた法制審議会が、殺人や強盗殺人など最高刑が死刑に当たる罪について25年の時効を廃止する−を柱にした見直し案を了承、千葉景子法相に答申した。

 答申を踏まえて政府は、今国会に刑事訴訟法と刑法の改正案として提出する見通しである。改正法が成立すれば、明治時代から続いてきた時効制度が大きく変わることになる。

 「人を殺しても逃げ続ければ、いつかは罪に問われない」という逃げ得は、許されなくなるわけだ。

 既に時効が進行中の事件にも適用され、2000年12月末に発生した世田谷一家4人殺害事件なども時効(当時は15年)を迎える前に改正法が施行されると、時効がなくなる。

 答申ではこのほか、人を死なせた罪で、懲役・禁固の罪の時効期間を2倍に延長する。「厳罰化」の流れに対応したものとみられる。いずれも時効が成立した事件は対象外である。

 時効の廃止や延長には、多様な見解があろう。法制審への諮問から答申までは4カ月だった。法改正をめぐって国会では、国民が納得できる議論を十分に交わすことを求めたい。冤罪(えんざい)を防ぐ具体的な手だても検討してほしい。

 内閣府が今月6日に発表した「基本的法制度に関する世論調査」によると、死刑や時効制度に関する国民の意識が読み取れる。

 死刑制度の存続は「やむを得ない」と回答した人が85.6%に上り、過去最高である。1994年から5年ごとに実施しているこの調査では一貫して増加傾向にあり、前回より4.2ポイント増えた。「廃止すべきである」は、わずか5.7%だった。

 死刑を容認する理由(複数回答)は、「廃止すれば被害者や家族の気持ちがおさまらない」「凶悪な犯罪は命をもって償うべきだ」「死刑を廃止すれば凶悪犯罪が増える」が、54〜51%と多い。将来も死刑を廃止しない方がいいと考えている人は60.8%を占める。

 時効制度は05年の法改正でも手を加えられた。有期刑の上限を引き上げたのに伴って、死刑に当たる罪の時効期間を15年から25年に延長した。

 しかし、凶悪事件の遺族や被害者たちの団体などから廃止や延長の訴えが続いてきた。世論調査にも表れているように、凶悪犯罪に対して厳しい対処を求める国民の声が、大きく広がっていることがうかがえる。

 被害者や遺族の立場に立てば、殺人の時効廃止は当然であろう。法制審は総会で見直し案を14対1で採決している。被害者遺族らの心情を重視し、「国民の処罰感情」に沿った結果といえるのではないか。

 公訴時効が維持されてきたのは、時間の経過に伴い事件の証拠が散逸したり、関係者が死亡して記憶が薄れるなど正しい裁判ができなくなる恐れがあることも理由である。

 時効廃止や延長で、長期化する事件の捜査やDNA試料など証拠保管のあり方などが課題になる。前回の法改正では適用しなかった時効進行中の事件への適用は事後法による不利益変更であり、憲法違反の疑義があるとの指摘もある。いずれも徹底審議が必要だ。


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