2010年2月16日(火) 東奥日報 社説



■ 効果と影響、見極め慎重に/高速道無料化実験

 前原誠司国土交通相はこのほど6月から来年3月までの間、実験的に無料化する全国の高速道路37路線、50区間を発表した。

 本県関係では青森自動車道青森東−青森ジャンクション(16キロ)と八戸自動車道の下田百石・八戸−安代ジャンクション(87キロ)の2区間が対象となっている。

 2010年度実験分は大都市圏の首都高速や阪神高速、主要幹線を除いた北海道、東北、九州など交通量の少ない地方路線が中心で、同じ東北でも仙台周辺や首都圏に近い福島は対象外。秋田や山形は県内のほとんどの区間が入り、地域の利便性で明暗が分かれた。

 県内の反応を見ると八戸道の無料化で県南と岩手県北の地域間交流への期待が高まる一方で、青森道を含めた全体の影響について流通関係や観光への効果は未知数との声が強い。

 実験とはいっても無料ならば普段は高速を使わないドライバーも利用するだろうし、地域の足として車のの利便性が高まるのは確実だ。国は無料化により流通コストが軽減され、経済活動や観光面で地域の活性化にもつながる、という。しかし、高速道無料化はいいことずくめではない。多くの問題があるのも事実だ。

 マイカー利用が増えれば、存続の岐路にある鉄道やバスなど地域の公共交通機関等へのしわ寄せは避けられない。国は実験にあたってまず地域の道路網、公共交通体系のあり方をしっかり把握するべきだ。

 交通量の増大によるCO2増加問題も懸念される。鳩山政権が掲げる地球温暖化防止に逆行する形になれば環境対策への積極姿勢が問われかねない。

 もちろん、受益者負担の原則もある。料金収入がなくなることで、道路の建設資金の返済や維持管理費が税金で賄われることになり、利用しない人や車を運転しない人も費用負担を強いられるのと同じことで不公平感は否めないだろう。

 高速道路の無料化は民主党が昨年の衆院選でマニフェスト(政権公約)に掲げた目玉政策の一つだ。今回の実施区間は総延長1626キロと供用中の高速道路の18%に相当する。予算が当初の6分の1の1千億円に削られたため大幅に絞り込まれた。

 社会実験として限定的だし「多様な影響を見極める」とうたっている割には、選定基準もあいまいで実効性にも疑問が残る。

 麻生政権下で実施した「千円乗り放題」で火がついた高速道路問題。現行のサービスは激しい渋滞が起きるなど問題点も指摘されたが、行楽客などに好評で効果もあった。それだけに今度は無料化の効果と中身が問われることになる。

 景気低迷で税収が落ち込み、政府も子ども手当に苦慮するなど財源確保が厳しい中で、あえて必要な政策なのか、と疑問視する声も少なくない。

 鳩山由紀夫首相は当初から12年度の完全実施を表明していたが、ここに来て無料化実験の結果次第では完全実施を見送る方針を示唆した。賛否両論の多い事業だけに国は地域活性化への効果はもちろん、さまざまな影響を検証し、その是非も含めて慎重に見極めてもらいたい。


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