| 2009年12月27日(日) |
患者や公的保険から医療機関に支払われる診療報酬が、来年度から全体で0.19%引き上げられる。 医師不足など地域医療の崩壊が進む中、鳩山政権が「国民の命を守る予算」の目玉として打ち出した政策だ。まだまだ不十分ではあるが、10年ぶりの増額改定は評価したい。 診療報酬のうち医師の技術料にあたる「本体部分」の上げ幅は1.55%。内訳は医科が1.74%、入院は3.03%、外来が0.31%のアップ。歯科は2.09%と医科を上回る増額となった。 一方で特許切れ後発品(ジェネリック)の普及で実勢価格が下がっている「薬価部分」は1.36%引き下げた。この医療費ベースで約5千億円分が「本体部分」に回される。 診療報酬はほぼ2年おきに改定している。増え続ける社会保障費を抑制する小泉構造改革路線の自公政権下で、2002年から引き下げられ、昨年まで連続して減額改定されてきた。マイナス分は合わせて8%近い。 その結果、病院の収入が減り、医師や看護師など医療従事者が確保できなくなるなど、地域医療の疲弊を招いてきた。深刻な医師不足の中で産科や小児科、救急医療などを閉鎖する医療機関が続出。これらの診療科目の医師、とりわけ病院勤務医の過酷な労働が論議を呼んだ。 当然のことながら、医療再生は衆院選の大きな争点となった。民主党はマニフェストで、旧政権の社会保障給付抑制路線を転換し、医療費を先進国平均まで引き上げる、と宣言。診療報酬の増額を主張して、政権交代を果たした。 改定をめぐっては全体の底上げをめざす厚労省が0.35%程度の引き上げを求めたが、財務省が財源不足や賃金下落、デフレの経済情勢をタテに引き下げを要求し調整が難航、官邸サイドの政治的判断で決着にこぎつけた。今回の政治決着は来年の参院選をにらんだ公約の履行にほかならない。 今後は厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)で具体的な配分を決めることになるが、焦点となるのは開業医と勤務医の所得格差と診療科目による収入格差の是正だ。病院と開業医の再診料の格差という長年の懸案が控えているが、まずは病院勤務医の報酬の底上げによって医師不足に歯止めを掛けたい。 今回の改定で医療機関の収入に反映される「本体部分」の増額分は約1300億円。厚労省はこれらを原資として入院医療を担う病院に手厚く配分し、勤務医の待遇改善を進める方針だ。病院経営が厳しさを増す中、収入が増えても設備投資などに充て、人件費にまで回らない可能性もある。このあたりは経営側の理解と、医療行政の指導力に期待するしかない。 本県も自治体病院を中心に過疎や財政悪化の中で地域医療現場の抱える問題も深刻化している。地域の声を受け止め、今回は過酷な勤務を強いられている勤務医や地域医療を担う人々に報いる効果的な配分を考えてほしい。それが抜本的な地域医療立て直しの第一歩につながるはずである。 |