2009年12月15日(火) 東奥日報 社説



■ 「冬の味覚」復活は本物か/ハタハタ漁

 「ハタハタずしり」。本県西海岸から師走のたよりが届いた。網に魚の群れが飛び込む。冬の味覚であるハタハタ漁が下北のタラ漁とともに本格化している。 型よし、味よしの豊漁を、と願う。

 ハタハタは別名「雷魚(カミナリウオ)」。寿命は4〜5歳。冬、寒雷とともに、産卵のため日本海沿岸にやって来る季節の使者だ。漁業者にとっては大事な収入源となる。

 だが近年、資源減少に悩まされてきた。ここにきて資源は回復傾向だが「ハタハタ復活」は本物か。今年の漁に期待するとともに、この「冬の味覚」を長く生かしていく工夫を求めたい。

 県内の主漁場は深浦町岩崎地区から鯵ケ沢鯵ヶ沢,鰺ヶ沢,鰺ケ沢町にかけて。その海の資源が復活し始めたのは最近のことだ。 ハタハタ漁は、1975年の1049トンを最後に激減していった。その2年後から2001年までの長期間、100トンを割った。

 漁民が当てにしてきたハタハタの群来は、30年近く、ほとんど姿を消した。

 この状況から、本県から新潟までの沿岸4県は、沖合底引き網漁業で15センチ以下の採補禁止などの資源管理協定を締結。秋田県は一時、3年間の全面禁漁、本県も県海面漁業調整規則でハタハタが産む卵(ブリコ)の採取禁止など資源管理に力を入れてきた。

 西海岸の自治体は共同でこれまで10万匹以上のハタハタのふ化放流を行うなどの努力を重ねてきた。

 そんな中の02年の師走、ハタハタの大群が押し寄せた。16〜18センチの2歳魚で「ハタハタ復活か」と浜は沸き、漁獲量は245トンに上向いた。04年は久々の“大漁”で漁獲量819トンとピーク時の半分近くまでに回復、昨年は1363トンと33年ぶりに千トンを突破した。

 ハタハタ復活への流れは、本県や日本海側各県のこれまでの資源管理が奏功したものといえる。

 今年のハタハタについて県産業技術センター水産総合研究所は「昨年の2歳魚が3歳になり入ってきたもの」と分析。「(中泊町)下前でも確認された」と指摘する。現段階で高値期待の雌が少ないようだが、県水産振興課は「2歳魚も含まれている。最終漁獲量は確定的に言えないが、ハタハタ復活の方向性に変化はない考える」と語る。

 県内海面漁業総体からすれば、ハタハタは漁獲量、金額とも微々たるものだ。

 が、それは貴重な恵み。ブリコ、鍋物、田楽、飯(いい)ずし、煮物、塩焼き…と日本海を代表する食文化だ。秋田県ではヒレ酒の開発・販売も進む。

 作家・太宰治もハタハタを楽しんだ。小説「津軽」の「西海岸」の項で太宰は「このハタハタを食べる事は、津軽の冬の炉辺のたのしみの一つ…」「私は、そのハタハタに依って、幼年時代から鯵ケ沢鯵ヶ沢,鰺ヶ沢,鰺ケ沢の名を知ってはいた…」と書いた。

 東北新幹線新青森駅開業が来年12月に迫る。「秋田ハタハタ」同様、「西海岸のハタハタ」も本県のブランドの一つに育てたい。

 国は今後、ハタハタの需給調査と資源管理で、安定した漁業経営の支援を図る方向だ。「ハタハタ回復」−厳冬に大漁旗がたなびくよう、県や町村、漁協に一層の尽力を期待したい。


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