2008年4月17日(木) 東奥日報 社説



■ 販路拡大しブランド化を/清水森ナンバ復活

 弘前在来のトウガラシ「清水森ナンバ」。この地域農産物の産地復活とブランド化を目指し、二〇〇四年に「在来津軽清水森ナンバブランド確立研究会」(中村元彦会長)が発足した。研究会は地元の生産者、行政機関、弘前大学、加工業者らで組織し、種子管理から栽培指導、販売まで一体となって取り組んできた。

 研究会の活動は今年五年目を迎える。「清水森ナンバ」の遺伝的特性を維持するため、ほ場を設けて株を選抜し、種子を採取するなどの努力を続けている。わずか二農家、百九キロで始まった「清水森ナンバ」復活事業は、〇七年度には三十五農家、九千キロまで生産規模を拡大している。

 「清水森ナンバ」の存続と生産体制の維持には、めどがたった。次は販路拡大だ。生産者が収量増や品質向上に努めるのはもちろんだが、加工業者は新商品の開発に努めなければならない。地元消費者の支援も必要だろう。

 幸い、「清水森ナンバ」のブランド化に追い風が吹いている。

 今年三月には、弘前市の「津軽遺産認定実行委員会」が決定した「津軽遺産」五件のうちの一つに選ばれた。文化財に指定されていない弘前らしい建物や食、風景、工芸品などを対象とした遺産に、ろうそくまつりで知られる「旧相馬村沢田地区」などとともに認定されたことは、地産地消の面からも「清水森ナンバ」にとっては朗報だ。

 また、同月、農林水産業を核に地域づくりをしている団体を奨励する政府の「立ち上がる農山漁村」有識者会議から対象団体に選ばれた。四月には、農林水産、経済産業両省が公表した農家や企業が連携し、新商品開発などに成功した事例集「農商工連携88選」にも選出された。さらに特許庁に申請していた商標登録も三月二十一日付で認可済みという。

 地域に長く伝わる農産物として市民に認められ、国が事業の成功例としてお墨付きを与えた。ブランド化に向けた商標登録も獲得した「清水森ナンバ」は、まずは順調な歩みを続けているといえよう。

 「清水森ナンバ」は弘前藩初代藩主、津軽為信が京都から持ち帰ったとされる。旧藩時代を経て、この地に根付き、昭和四十年代までは盛んに栽培が行われていたが、価格の安い輸入トウガラシに押され、平成に入ると生産者が減り、存続の危機にさらされた。

 研究会の努力が実り、再生の軌道に乗りつつある「清水森ナンバ」は風味豊かな上、ビタミンC、Eを多く含み、機能や栄養面でも価値の高い食品という評価を得ている。

 食の安全安心に関心が高まる中、農産物をめぐっては伝統野菜が注目を集めている。京野菜や加賀野菜が高い人気を誇っていることが、このことを裏付けているといえる。

 「清水森ナンバ」も弘前の伝統野菜と言われるような農産物に育つことを期待したい。

 研究会が目指す「清水森ナンバ」のブランド化が実現したら、弘前の農業者の自信復活にもつながるのではないか。「農こそ国の基」の気概を取り戻す好機にしたいものだ。


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