| 2007年3月28日(水) |
「殺すつもりはなかった」「(死亡した人たちは)逃げたと思った」として、死刑判決の破棄を求めた被告の主張はまたも通らなかった。 二〇〇一年五月、消費者金融「武富士弘前支店」で従業員九人が死傷した強盗殺人・放火事件。強盗殺人罪などに問われた元タクシー運転手小林光弘被告(48)に対する上告審判決で、最高裁は一、二審の死刑判決を支持し、上告を棄却した。 焦点となっていた殺意の有無について、判決は「従業員多数に対する未必の殺意をもって放火を実行した身勝手極まりない犯行」と断じた。 最初から従業員の殺害を意図してはいなかったが、焼死する可能性が高いことを認識しながら、あえてガソリンなどの混合油に火を放ったとする未必の殺意を一、二審と同じく明確に認定した。 競輪で遊ぶために借金を繰り返し、その返済に窮しての犯行だった。支店に押し入り、混合油をまいて、金を要求した。だが、支店長が要求に応じないことに怒り、自暴自棄の気持ちから火を放ったとされる。 これにより、支店内にいた二十歳から四十六歳の男女従業員五人が逃げ場を失って死亡し、四人が重いやけどを負った。何の罪もない人たちばかりだった。店舗は全焼した。 身勝手な動機から短絡的に犯行に及び、悲惨な結果を招いた罪はあまりにも重大だ。遺族の気持ちなども考え合わせれば、三度目の極刑という厳しい判決もやむを得ないのだろうか。五人の裁判官全員一致の判決だという。死刑が確定する。拘置中の死刑囚は百二人となる。 一審で主任弁護人を務めた三上雅通弁護士は小林被告を「残忍、冷酷というよりも愚かな人間。死刑にはふさわしくない」とみる。だから、死刑制度は容認するとしながらも「長い時間をかけて罪を償い続けてほしかった」と話す。 だが、今回の事件が遺族を苦しめ続けたことも忘れるわけにはいかない。遺族の一人は「火事のニュースに接するたびに事件の日を思い出す」と本紙に語っていた。愛しい肉親の変わり果てた姿と対面した瞬間がよみがえってくるという。これまで長く重い月日を過ごしてきた。 上告審判決では亡くなった五人全員の遺族が傍聴席の最前列に座った。極刑が下されると、涙を流す遺族もいた。「ほっとした」「気持ちに一区切りついた」「本当に終わったと実感できた」。判決を歓迎する声が相次いだ。 死刑は人の生命を永遠に奪い去る究極の冷厳な刑罰である。それだけに、人によっても、立場によっても見方は分かれる。死刑の是非についての論議を深めていく必要がある。 この事件が社会に与えた影響も見逃せない。事件の後、強盗犯人が各種店舗に押し入り、油のようなものをまいて金を要求する事件が相次いだ。 小林被告が逮捕されるまでの約十カ月間に全国で百四十八件発生し、うち八十九件で実際に現金が強奪された。まさに日本の治安を揺さぶったと言っていい。厳罰の裏にはこうした深刻な要因もあった。 |