2005年8月7日(日) 東奥日報 社説



■ 日タイFTA決着/不可避な農業構造改革

 アジア諸国との自由貿易協定(FTA)ネットワーク作りを進めるわが国はタイとの交渉で大筋、決着した。小泉首相が月内にもタクシン首相と会談、正式合意する運びだ。

 昨年十一月から協議が中断中の韓国、交渉入りに意欲を見せる中国、東アジアと経済関係を強めるインド、東南アジア諸国連合(ASEAN)域内最大の人口を抱えるインドネシアとの交渉が次の課題となる。

 世界貿易機関(WTO)の貿易自由化交渉の難航で主要各国がFTA交渉を加速させる中、日本も迅速な交渉推進が迫られている。

 政府は昨年来、ASEAN各国との交渉を優先、合意したのはシンガポール、メキシコ、フィリピン、マレーシアに次ぎタイが五カ国目。この中ではタイが最大の貿易相手国だ。

 昨年二月の交渉開始以来、日・タイ両国は農林水産分野で、日本が熱帯果実の関税撤廃と鶏肉の関税引き下げに同意。タイはコメや砂糖などの自由化要求を取り下げた。

 難航したのは自動車、自動車部品、鉄鋼など。外国メーカーの現地生産を土台に発展してきた国内産業が、日本製品の輸入増加に脅かされる事態を懸念したタイ側は関税引き下げに抵抗した。

 結局、大型車の関税引き下げは小幅、小型車の結論は先送りに。自動車部品は二〇一一年、鉄鋼は一五年までに関税を撤廃することで合意に達した。

 わが国から見て不十分な結果に終わった原因は、わが国がタイ側の強い農産物市場開放要求に高いハードルを設けた点にある。コメは交渉から除外。鶏肉や豚肉への関税引き下げ幅は小さく、日本の消費者への恩恵も小さい。

 親日国タイとの交渉合意自体は歓迎すべきだが、これでは双方にとって恩恵は極めて限定的なものにならざるを得ない。

 FTA交渉は、農産物から多様な工業製品まで幅広い物資の貿易に加え、投資ルールや労働者の移動までを網羅した本格協議を伴う。一方を死守すれば、一方の要求を断念せざるを得なくなりやすい。

 わが国にとって死活的に重要なことは、国際社会、国際経済に通ずる方向への国内の構造改革推進である。相手国の要求をその場しのぎで拒否するだけでは、今後の貿易拡大にはつながらず、貿易立国日本の究極の国益をも損なう。

 一連の交渉を見る限り、国際的に高い生産性を誇る工業製品と、改革の一向に進まない農業との極端な格差が、日本の交渉姿勢を強く制約しているのは明らかだ。

 世界がグローバル化した現在、国内事情を優先した問題先送りの小手先対応ではもはや、生き抜くことはできない。そこをうまく解決していくには先進国日本の、特に農業分野の構造改革が決定的に重要な段階に来ていると言える。

 歴史認識問題、教科書問題を抱える韓国や中国とのFTA交渉も避けては通れない。政府、関係省庁は、この点を十分考えた大局的対応が必要不可欠なタイミングに入ってきたことを肝に銘ずる必要がある。


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