Web東奥・社説20040504
  
2004年5月4日(火) 東奥日報 社説



■ 高齢者の転倒・骨折なくせ

 日本は世界一の長寿国である。厚労省がまとめた二〇〇二年の簡易生命表によると、零歳の赤ちゃんが今後何年生きるかを示す平均寿命は、男性七八・三二歳、女性八五・二三歳だ。

 長寿の象徴ともいえる百歳を超えた人の数も年々増えている。厚労省の調べでは、〇三年九月時点で前年同期比二千六百二十七人増の二万五百六十一人に上る。

 米国の民間人口研究所「マウンテンビュー・リサーチ社」が英国の科学誌「ネイチャー」に発表した予測では、日本人の男女の平均寿命が二〇五〇年には九十歳を超えるという。

 長寿は人類の願望といえるが、健康であってこそだ。病気で寝たきりの老人も多く、長生きはしているが、健康でない状態で生きながらえている現実がある。

 女性は一般に健康で長生き、とされるが、厚労省の〇一年国民生活基礎調査によると、寝たきりで介護が必要なおばあさんも多い。寝た切りの原因が挙げられている一位が脳卒中などの脳血管疾患、二位は高齢による衰弱、三位が転倒・骨折、四位は痴ほうと関節疾患だ。

 介護が必要な男女に特徴がみられる。男性は四割以上を脳卒中が占める。一方、女性の脳卒中は二割程度で、衰弱や転倒・骨折、痴ほうの比率が高い。

 お年寄りの寝たきりにつながりかねない転倒・骨折の防止が課題だ。

 仮に六十五歳になったとしよう。平均余命、つまりあと何年生きられるかだが、男性は一七・九六年、女性は二二・九六年。

 このうち健康で自立して暮らせる健康寿命は、男性はおよそ十五年間、女性は十八年間。平均余命も健康寿命も女性が長いが、介護される期間は女性の方が男性よりも約一・七倍長いというデータが出ている。

 女性は女性ホルモンの影響で脳卒中にかかりにくいが、筋骨格系の虚弱による転倒・骨折が多い。

 男性は転倒しても半数以上は何でもなかったのに、女性の八割は何らかの障害が出た。

 ある生活調査によると、お年寄りの転倒は午前三時ごろから増え、午前六時ごろをピークに午前中に多い。早朝のトイレと関係があるとみられている。

 廊下の段差解消、滑りにくいスリッパを使う、照明を明るくするなど、気配りが必要だ。

 加齢に伴い筋肉が衰えるが、最近、注目されているのが、上半身と下半身をつなぐ大腰筋。歩くことと密接な関係があるとされ、この筋肉の量を維持することが老化防止につながる、という研究結果も出ている。

 筑波大大学院体育科学系の久野譜也助教授は、大腰筋の筋トレとウオーキングを組み合わせた独自のプログラムと効果を茨城県大洋村でのプロジェクトで実証した。

 このノウハウを全国に発信する「つくばウエルネスリサーチ」を作り、新潟県見附市など全国約二十自治体と契約を結び、お年寄りの健康増進に役立てている。

 一方、お年寄りの転倒を防ごうとことし四月、東京都内に転倒予防医学研究会が発足した。

 メンバーは医師、看護師、理学療法士ら。代表世話人は身体教育学の武藤芳照東大教授。「転倒に関する研究は保健、医療、福祉、スポーツなどさまざまな分野に分かれて行われてきた。これらの成果を集約し、実践的な予防法を確立したい」と抱負を述べた。

 二十一世紀は「おばあさんの世紀」といわれる。二〇五〇年に全人口の約二割を六十五歳以上の女性が占める。

 本人の健康はもちろん、国全体の医療費、介護費を抑える意味でも、高齢者の転倒・骨折防止は大切なのである。


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