| 2003年12月12日(金) |
市町村は一体、何のために合併するのだろうか−。規模の大きいことがいいからか、地方住民自治がより良質になるからか。合併する以上、その主目的に健忘症になってもらっては困る。 多くの市町村合併は、将来にわたる行財政の効率化、ひいては住民の福祉向上に役立てるためではないか。それが新市誕生によって議員定数ばかり巨大なマンモス議会が生まれるとしたら、話は本末転倒だ。今年の流行語「なんでだろう」の思いがぬぐえなくなってしまう。 それでなくても、市町村財政は窮迫、硬直化を強めている。住民には、極端な定数増は行政効率化に反する税金の無駄遣いにしか見えない。むしろ、議会の効率化をこそ望んでいるのだから、当然、反発は強い。マンモス化を認めた合併特例法の「在任特例」規定には問題大あり、なのだ。 現在、わが国の定数最多地方議会は東京都議会。都は東北六県全体より人口が多く、都議会定数が日本一なのは当然だ。しかし、その数は百二十七議席。ところが、八戸市や弘前市を中心とした市町村合併で生まれる新市議会は、都議会をはるかに上回る議員定数になりそうという。 極端にいびつな、そんな形を生む根本原因は、同法が「在任特例」という特例規定を設けた点にある。合併で身分を失う議員の合併反対論を抑える狙いで、旧市町村の全議員が合併後も最長二年間(編入合併の場合は編入先の市の残任期間)、在任できるとしているのだ。 「定数特例」で、新自治体の定数の二倍までであれば四年間(編入合併の場合は編入先の残任期間)に限り、定数を増やすことさえ可能だ。 二〇〇五年一月合併を目指す八戸市など八市町村の新市議会定数は何と東京都議会をも上回る百四十六議席。任期は八戸市への編入合併のため、八戸市議改選の〇七年春の統一地方選までだ。三十万人足らずの新市の、本来の法定定数は三十六議席だから、実にその四倍以上の不均衡が生まれる。 一人年間三百数十万円の町村議会議員の報酬を八戸市議並みにすると、一人約九百五十万円と、現状の二倍をはるかに超える。〇〇年度に計約八億七千万円だった八市町村議の報酬を市議報酬と同等にすれば十六億五千五百万円に跳ね上がる。報酬を市議並みにしても、定数を法定数の三十六人に抑制すれば約四億円で済む。 弘前市を中心とする津軽南地域の十二市町村は十一月七日、法定協議会を発足させた。現在の十二市町村議を合計すると、二百一人になる。問題の「在任特例」を使うか使わないかの話し合いはこれからだ。住民よ、注視しよう。合併後のたとえ暫定措置とはいえ、二百人を超す日本一のマンモス定数はやはり異常だ。 ここは原点に立ち返って、合併の主目的を思い出そう。マンモス市議会が行財政の効率化、住民福祉向上の一体、何に役立つというのか。現存する市町村議の議員ポストや就業機会確保の自己目的化が狙いでは主客転倒する。それは地方自治を食い物にする以外の何物でもない。 「厳しい財政下、議員たちは自分たちの報酬のことしか考えていない」「何のための合併か」…。多くの住民から、ため息に似たこんな声が漏れ聞こえる。 議員は議会を私物化してはいけない。住民ではなく、議員様重視のマンモス定数がもたらす放漫財政が、地方自治の質をむしばみ、自治そのものを劣化させずにおかない厳しい現実を直視すべきだ。議員の自律と自浄の精神なくして、住民の託した民意の実現は不可能だ。選良よ、ツケは後で必ず回ってくるのだ。 |