| 2003年9月3日(水) |
心身に重い障害を持つ人が払った医療費と入院の際かかった食事療養費は、県と市町村が助成して基本的に自己負担がゼロだった。 この制度のあり方を検討してきた有識者による委員会が五日、最終報告を出す。重度障害者に応分の負担を求める仕組みに変えるよう県に提言する、とみられる。 背景に、県の財政難がある。お年寄りも医療費を一部負担するなど福祉見直しの流れが強まるなかで、重度障害者だけ自己負担がないのは妥当か、ともみる県の意向に沿う報告になりそうだ。 ただ、委員会の委員には障害者が一人も入っていない。障害者団体の意見を聞いたのは、過去七回の委員会で一度だけ。これでは障害者の声、生活実態が十分に反映されない、と障害者団体は再三批判してきた。当然だと思う。 三村申吾知事は、七月県議会で負担を求める方向性を打ち出した委員会の検討内容を尊重する、と答弁した。知事選前の六月に県保険医協会が行った候補者アンケートには、現行制度見直の必要はない、との趣旨の回答をしている。 障害者にすれば、知事の真意を確かめたいだろう。一部でも自己負担になると、今でもぎりぎりの生活が一層苦しくなる、と制度存続を訴える機会も求めていた。 だが、新たな発言の場は最後まで設けられなかった。委員会は、当事者抜きに近い形で報告をまとめる。残念である。 県は、委員会の報告を元に県案をつくり、二〇〇四年度の予算編成に反映させる意向のようだが、結論を出す前に、せめて障害者の意見を聞いてもらいたい。 この制度は、一九七五年度に誕生した。対象は当初、身体障害者手帳1級・2級の人、愛護手帳Aを持つ人だけだったが、保健福祉手帳を持つ精神障害者(一部負担あり)などにも広げられた。 〇二年度の対象者は約三万六千人で、助成総額は県・市町村分を合わせて約四十億円。一人平均にすると、年間助成額は十万円を超える計算だ。 県の負担は半分の約二十億円。県が見直しを進めている各種補助事業のなかで、飛び抜けて多い。対象者は年々増えており、助成額は膨らむ一方だ。聖域なき事務事業の総点検を進めている県が、この制度も見直しの対象に含めたのは理解できる。 ただ、視点を変えると、助成額の大きさは、恩恵を受けている重度障害者の多さも示している。 多くは年金暮らしで働けない。働くことができても、収入が少ない。最も弱い立場に置かれているこうした障害者や、介護のため働きに行けない家族にとって、医療費負担実質ゼロという今の制度は大きな支えになっている。 県は、老人保健制度との整合性を問題にする。寝たきりのお年寄りでも医療費を一割負担しているのに、重度障害者は負担がない。公平か、と疑問視している。 しかし、重度障害者は、障害の治療やリハビリなどが必要な分、医療費もかさむ。県身体障害者福祉団体連合会の前田保会長は「高齢者と重度障害者の医療費負担問題は、同じ土俵で議論できない」と反論している。 県は二年前にも見直し案をつくったが、福祉が後退する、と市町村から異論が出され撤回した。それだけ見直しに抵抗が強く、必要とされている制度だけに、委員会内にも「聖域として存続させるべきだ」との意見がある。 委員会の報告を、県はあらためて吟味してみる。重度障害者にとって“激痛”になると分かっているが、財政再建のため応分の負担を求め、我慢してもらう。どちらを選ぶにしろ、県は、財政事情などを率直に説明し、障害者も主張して理解し合えるまで議論する。結論は、その上で出すべきだ。 |