| 2003年8月1日(金) |
三村申吾知事にとって、激動の二カ月だったに違いない。 木村守男元知事の辞職に伴う知事選に出馬表明したのが五月末。六月末の選挙で、次点との差わずか約二万票の大激戦を制し、本県最年少の知事に就任した。 七月定例県議会が初の試練の場だったが、自民などの安定多数に支えられ、乗り切った。空席だった副知事、出納長人事案も最終日に承認され、三役がそろった。 所信表明や県議会答弁からは、県政が木村県政とは別の方向に動き始めている流れが読みとれる。 木村氏の女性問題が報じられて以来この半年間、県民が心配顔で見守ってきた県政の混乱が、ようやく収まりつつある。県政への信頼回復を図るための第一関門は、乗り越えたようだ。 ここまでは、お手並み拝見の段階だろう。問題は、総論から各論に進む今後である。個別の課題に取り組む見識、決断する胆力、指導力が試される。腕の見せどころだ。 答弁に元気がない、と県議会で指摘された知事は「職の重さにスグダマッテ(委縮して)いたのかもしれない」と反省していたが、委縮はもう許されない。 就任からひと月たち、徐々に三村色がにじみ出てきたとは思う。 八年余りの木村県政は、福祉日本一など派手なスローガンが先行した。個々の政策では、公共事業や箱モノといわれる大型建設事業を重視し、結果として県の財政悪化を招いた。 三村県政の合言葉は「ふるさと再生」である。津軽海峡大橋構想や青いバラ開発などの木村ロマンと決別し、県財政の再建、雇用・経済対策を緊急課題に据えた。地味な堅実型にみえる。 トップダウンで指示し、県職員が知事の顔色をうかがう場面が目立ったという木村時代と違い、職員をパートナーとして一緒に仕事をしていく手法は、庁内から歓迎されているようだ。 だが、おとなし過ぎないか、と与党から注文がつくような姿勢、県民から批判が多かった海峡大橋構想の中止といった軌道修正だけでは、県政は運営できない。 事務・事業の聖域なき見直しを掲げた知事は当面、大型施設の新規着工は行わず、工事中の施設も完成年度を延ばす方針を示した。だが、どの施設の建設を延期するかなどの各論に入ると、厳しい判断を迫られるのは必至だ。 重度心身障害者の医療費助成事業では、障害者に応分の負担を求める検討委員会の方向性を尊重する考えだが、働けない人が多く医療費がかさむ障害者の生活を圧迫することが、財政再建を理由に許されるのか、と問われるだろう。 知事は、財政改革に伴い自らの給与、退職金を減らすという。では、パートナーと呼ぶ職員の給与削減にどこまで踏み込むかなど、どれも難しい問題ばかりだ。 所信表明は「中身が見えない」と野党から批判された。これからは抽象論は通用しない。 黒石ねぷた祭りを皮切りに、県内各地で夏祭りが始まった。三村県政は、県政運営の方向付けにあたる「台座」がやっと組み上がって出陣したばかり、といえる。 台座の上に知事がつくろうとしているねぶた、山車という政策の輪郭が浮かび上がるにつれて、沿道で「もっと働く場を」「若さゆえ、しがらみにとらわれない県政を」と望んでいる県民が落胆したり、そっぽを向くかもしれない。 知事は、財政難を理由に国のリンゴ果樹経営安定制度から撤退する可能性を示唆した、と受け取られる発言をして生産者団体から反発を受け、県幹部に釈明させた。 こうした説明不足や、公約と違うのではないか、との指摘が県議会や県民から重なると、取り戻ししつつある県政への信頼が損なわれる。銘記してもらいたい。 |